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誘拐

この作品は、城戸賞を受賞した脚本を元に、平成ゴジラシリーズでお馴染みの大河原監督が取り組んだ、東宝映画久々の内部作品だったと思う。

雑誌「キネ旬」などでも、撮影中から詳細な報告記事が連載され、大いに期待された大作ではあったのだが、興行的には、全くふるわないまま終わってしまったはずだ。

一部の評論家などの中には、本作を誉めている声もあるが、個人的には、成功作とはいいがたいように思える。

基本的には、「飢餓海峡」や「砂の器」などの系譜に属する「社会派推理」パターンだとは思うのだが、前半部分の、大掛かりな都心ロケを中心とした身代金受け渡しの映像的迫力に対し、肝心の後半の謎ときが、あまりに映像的に弱すぎるのである。
しんみりとした犯人の告白と、それを補足する断片的な静止画のモンタージュ程度のような過去表現では、犯行の背景にある、深刻な社会問題は、観る者の心に響いてこない。

身代金受け渡しのトリックにしても、本作では、途中で、犯人たちが予測していた以外の「突発事態」が起こったはずで、そのハプニングから、トリックが破綻して行く…のかと思いきや、すんなり、計画が成功してしまう…という辺りの展開にも、何だか釈然としないものを感じてしまうのである。

おそらく、脚本を文字で読んだ段階では面白いものだったのだろうが、それが、映像としての魅力に結びつかなかったように思えてならない。

劇中に登場する情緒的な表現を、どう受け止めるかによっても、本作に対する感想は異なって来るのだろうが、私は買わない。

尻すぼみ…という感じが強い作品であるのが、惜しまれる。