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公開当時から、この作品に関しては賛否まっぷたつの批評を読んでいたが、邦画としてはまずまずの出来…といった所ではないか。

サスペンスの盛り上がりは、正直な所、弱いな…と感じた。

原作を読んでいた時は、これはハリウッド映画を意識して書かれたもので、映像的だな…と感じたものだが、実際に映像化されてみると、意外とこの内容、活字向きの素材だった事が判明した。

人里からは隔絶された巨大ダム…という設定、小説ではそれなりに捜査側と事件現場の動きが連動していたように思えるのだが、映画では、何となく分離していたように感じる。(その辺が、全体のスケール感をちょっと狭めてしまっているような…)

巨大ダムの水を一挙に放水すると、川下の広大な地域に莫大な被害を被る…という辺りの緊迫感も、今一つ、描ききれていないようにも感じた。(劇中、中村嘉津雄が、コーヒーを地図上にこぼして、一応説明してはいるのだが…)

複雑な内部構造を持つダムを舞台にしているにしては、刻々変化していく冨樫やテロリストたちの位置関係が、画面上ちょっと分かりにくい…というのも、サスペンスを薄めてしまった一因だと思える。

やはり、活字を通して、じっくり現場の状況を想像しながら抱くイメージと、直接的な映像を観ながら膨らますイメージとは、性格が違うのだろう。

まぁ、しかし、そういう疑問部分を差し引いても、それなりに観て「損をする」ほどのひどさではないだろう。

結局、ハリウッド映画「のような」ものを作れば、観客は無意識に本家と比較してしまう事は当然の事だから、その辺で不満が出るのは、制作側もあらかじめ織り込み済みだったのではないか。

ハリウッド映画のようなテイストを日本映画でも…というニーズが潜在的にある限り、今後もこうした傾向の作品は、少しづつだろうが、作られていく事だろう。

そういう意味では、本作はまだまだ未熟な部分は目立つものの、スタッフたちが現場で学んだ事も大きかったのではないか。

それが、次の作品に生きて来る事を期待したい。