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少年探偵団 妖怪博士

1954年の松竹版同様、こちらでも、二十面相が狙うのは原子力関係の設計図。

松竹版では、今一つ生彩がなかった二十面相だが、この東映版では、南原伸二(後に宏治)が凝ったメイクで見事な怪人振りを披露している。

中原ひとみ演ずる、明智の助手マリ子も愛らしいのだが、こちらの作品では、今度は惜しい事に、明智自体が今一つぱっとしない。

岡田英次扮する明智は、大人しい…というか、地味というか…。

ヒーローとしての「華」がないのである。

それでも、乱歩の原作の雰囲気を見事に再現している冒頭の無気味な洋館の描写、その屋敷内で、ビックリハウスのように回転する部屋の仕掛け、落とし穴に落とされ、ドロドロ状態の石膏を流し込まれる明智たちのサスペンス、ラスト、自爆装置で爆発する屋敷のミニチュア特撮の見事さなど、けれんに満ちた見せ場も多く、当時の緩やかなテンポにさえ慣れてしまえば、今でも十分に楽しめる作品になっている。

冒頭に登場する原子力工場の全景や西洋館は、絵合成なども巧みに使われており、二十面相の変装も、当時としては良く出来ているのではないだろうか?

警視庁の通信室から、パトカー全車に緊急指令が発せられる所や、パトカーが町中を走り回ったり、新聞の輪転機が廻ったりと言った、古典的なサスペンス物の技法も心地よく、子供向けにしては楽しめる展開になっている。

決して、何故、二十面相は、たった一人の子供を拉致するのに、面倒な変装をあれこれしなくてはいけないのか?などとは突っ込んではいけない。

二十面相は、子供を驚かすのが好きなだけなのだと思うが、一方で、少年探偵団には容赦がなく、二重性格的な所もあるのではないか。

有名な「ぼ、ぼ、ぼくらは少年探偵団!」という、ラジオドラマの主題歌が劇中で流れるのも嬉しい。

誰もが子供心を取り戻せるような、少年ものの名作!

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1956年、東映東京、江戸川乱歩原作、小林恒夫監督作品。

「一般人立入禁止 無用の者此の地域内に立ち入ると法律に依って厳重に罰せられます。」と言う注意書きが貼ってある金網に囲まれた「国立原子力第一工場」の門や構内はには、銃を持った大勢の警備陣が常駐していた。

突然、その構内に非常ベルとサイレンが鳴り響く。

警備員や研究員が金庫室に駆けつけると、金庫は開けられており、突然、笑い声が響き渡ると、黒めがねに山高帽、黒いマントの怪人二十面相が出現する。

タイトル

出動する警察部隊の姿、廻る新聞の輪転機を背景に、キャスト、スタッフロール

新聞の束を道路に落として行く配達車

「東京新報」の一面トップには「原子力第一工場襲わる!又も怪人二十面相の仕業か」「洪笑して消失す」の文字が載っていた。

明智探偵事務所

新聞を読んでいた岸マリ子(中原ひとみ)は、まあ、酷い!名探偵明智小五郎も怪人二十面相には敵わないだなんて!と膨れていると、先生は必ず、ブンヤの鼻を明かしてくれますよと慰める。

そこにやって来たのが少年探偵団の面々で、マリ子姉さん、先生はまだ現場?とか、まだ連絡なかった?など、小林少年(小森康充)や篠崎少年(後藤頼久)が次々に質問を浴びせて来る。

まだ何も…と答えたマリ子は、そう言えば、相川君は…と、少年探偵団の中の一人相川少年(原国雄)は…と思い出すと、そうなんだ、原子力工場の技師長なんだよと一緒に来ていた子が教える。

相川少年は、昨日、夜中に出かけて行ったままなんです。僕にも、何を取られたか分からないんだけど…と答えると、相川君のお母さんのためにも、怪人二十面相は僕たち少年探偵団の手で捕まえなければいけないんだと他の子も張り切る。

じゃあ、少年探偵団も責任重大って訳ねとマリ子が笑顔で答える。

まず先生に会って、僕たちの捜査方針を決めなくちゃ!と篠崎少年が提案すると、僕たちの役目は、あくまでも、怪人二十面相の隠れ家を見つける事だろう?と小林少年が反論、篠崎少年は、こんな大事件が起こったんだから…と不満そうだったが、他の少年たちは、張込みと隠れ家の発見を続けようと言う意見が大勢を占める。

その時、電話がかかって来たのでマリ子が出ると、ええ、現場の方にお出かけで…とマリ子は怪訝そうに答え、どちら様でございましょうと聞くと、えっ!怪人二十面相!と驚いて、受話器を取り落としてしまう。

その声に気づいてぶら下がった受話器の周囲に集まった少年たちは、

明智の部下どもめ、明智に伝えるのだ。

この二十面相、どうやら昨日は明智のために裏をかかれたようだが、一度狙った物は例外なく必ずちょうだいする。

明智と少年探偵団の奴ら、決して復讐を忘れるな…と言う不気味な二十面相の声と笑い声を悔しそうに聞くのだった。

その頃、「国立原子力第一工場」にジープでやって来た中村捜査課長(神田隆)を取り巻いた新聞記者たちは、次々に質問を浴びせるが、まだ何も分からん!と言っただけで、工場内に入って行く。

いや、分かるはずはありませんよ、あの設計図は…と明智小五郎(岡田英次)に説明していたのは、少年探偵団のメンバー、相川泰二君の父親(宇佐美諄)だった。

しかし、狙われているのは事実ですから、十分注意は必要だと思いますと明智が言うと、心得ていますと答えた相川技師長だったが、大地君、君の責任じゃないか!とその場にいた女性職員を叱りつける。

しかし、見かねた明智は、金庫は開けられていただけだし、君の管理は悪かった訳でもない。君は元気を出して仕事をして下さいと、女性職員を慰める。

そこに、中村課長がやって来たので、相川技師長は、あなたと明智さんのお陰で助かりましたと礼を言う。

いやいやと笑顔で謙遜した中村課長だったが、ところで二十面相なんだが、奴さん、またどこに潜っちまったのか…と考え込む。

奴の事だ、無駄足を踏んだと知れば、又姿を現すはずだ…と明智は言う。

しかし、肝心の設計図は我々3人しかあり場所を知らないんですからな…と相川技師長が言うと、相川さん、気を許してはいけません、相手は警戒厳重なこの工場に忍び込み、苦もなく金庫を開けた国際スパイ団の首領怪人二十面相です。そして奴は賢明になって設計図を狙っている。我々は全力を尽くしてそれに対処しなければならない…と明智が諌める。

(少年探偵団の歌が流れる中)町中に散らばった少年探偵団は監視を続けていた。

バスから降りたメガネの男がそわそわしているので、停留所で見張っていた2人が怪しみ尾行してみると、その男は慌てたように近くの公衆便所に飛び込んだので、単にトイレを我慢していただけと気づく。

その頃、相川君と篠崎君は組んで街を歩いていたが、二叉路に突き当たったので、それぞれ別の道を行ってみる事にする。

1人になって歩いていた相川君は、義足を付けた浮浪者に遭遇。

その男が、杖の先に付いたチョークで、路上に矢印のような不思議なマークを描くのに気付いたので、その後を尾行して行くと、荒れ果てた怪し気な西洋館にたどり着く。

キツネの像の後から、男の様子を見ていると、何と、玄関前の門をよじ上り二階のバルコニーにするすると登って行くではないか。

屋敷の横に回って、窓の隙間からそっと中を覗き込んでみると、あの義足の浮浪者が床に座り、こちらを見ながら笑っているではないか!

驚いて、別の窓から中を覗き込むと、猿ぐつわと手足を縛り付けられた少女が横たわっているのが見えたのが、ガラス窓を開けて中に入り込んだ相川君は、少女の綱を解き、しっかりして下さいと抱き起こそうとするが、その少女の首は転げ落ちてしまう。

マネキン人形だったのだ。

しかし、怯えた相川君が逃げ出そうとすると、入って来たガラス窓が自然に閉まってしまう。

そして、部屋の中の明かりも消えてしまったので、手探りで部屋の中を動いてみた相川君だったが、マネキン人形に躓き、少女の顔の部分に触れてしまったので驚く。

部屋の外に出て階段を登り二階部分に登ってみると、今出て来た部屋のドアが閉まるのが見えた。

書斎のような部屋に入ってみた相川君は、昼間なのにカーテンを閉め切った部屋の中で電気スタンドをつけ、パイプをくゆらせながら本を読んでいた男に、おじさんは此の家の人ですか?と聞く。

すると、そうだ…と答えたその男は、自分は少年探偵団の相川と言いますと名乗った相川君に、君は誰の許しを得てここに入って来たのかね?と聞いて来たので、僕、この家に変なコ○キが入るのを…と言いかけるが、待ちたまえとその言葉を制される。

私はこの家の主人、蛭田博士(南原伸二)だ。変な言いがかりは止してもらおうと、その男は言うので、おじさんは1人でここに住んでいるのですか?と相川君は聞いてみる。

そうだと言うので、じゃあ、一緒に下に行ってみましょう、そうすれば分かりますと相川君は誘う。

蛭田博士は立ち上がり、読んでいた本を閉じるが、その表紙を観た相川君は驚く。

そこには、あの浮浪者が地面に書いていたのと同じマークが書かれていたからだった。

それに気づいた蛭田博士は、自分が怪人二十面相だと名乗ると、逃げるな!お前にはちょっと用事があっておびき寄せたんだ…と言いながら相川君に迫って来る。

僕に何の用事があるんだ?と果敢にも聞いた相川君に、二十面相は今に分かる…と言いながら笑う。

相川君は書斎から逃げ出そうとするが、扉が勝手に閉まってしまう。

隣の部屋に逃げ込んだ相川君だったが、二十面相が机の上のスイッチを押すと、突然、隣の部屋全体がびっくりハウスのように回転し始める。

その頃、あの地面に書かれた謎のマークを頼りに、篠崎君も屋敷にやって来ていた。

一方、地下室のような所で気がついた相川君は、階段を降りて来た不気味な魔法使いのような老婆が食事を運んで来た事を知る。

机の上に燭台とスープの皿を置くと、さあ坊や、これをお食べ…、元気をお出しと老婆は、隠れていた相川君に勧める。

怖がらなくて良い、このお婆は優しいお婆だ…、坊や、このお婆の顔をご覧と言いながら怖がって身をすくめていた相川君に近づいて来た老婆は、目をそらした相川君の目の前に移動すると、すぐ楽になる…、このお婆の顔を良く観てごらん。良く観るのだ、このお婆の目をと言いながら、持っていた杖を、トンボを捕るときのように回転させ、えいっ!と気合いを入れると、相川君は催眠術をかけられ倒れてしまう。

お婆は笑い、杖を倒れていた相川君に指し示すと、急に起き上がった相川君は、杖の力で動かされているように、テーブルに座ったので、その前にやって来たお婆は、これからお前はこのお婆の言う事を言いて大切な仕事をするんだと命じられる。

分かったね?お前はこのお婆の言う事が聞けるね?と言われた相川君は素直に頷く。

すっかり良い子になったね?これでお前の家に隠された原子炉の設計図が手に入る…とお婆は喜ぶ。

笑いながら相川君に迫って来たお婆の目と、車のライトがオーバーラップする。

明智探偵事務所にマリ子と共に車で帰って来た明智小五郎を出迎えた少年探偵団。

先生、相川君は?何か連絡がありませんでしたか?と小林少年が聞くと、明智はいや…、どうしたんだ?と答える。

僕たち今日、上の方面を探していたのです。5時にここに集合するはずだったんですが、相川君が今まで待っても帰って来ないので、先生と直接連絡取ったのかと思って…と小林少年が説明する。

自宅で、夕食の仕度ができるのを待っていた相川技師長は、明智さんから電話が入ったと女中千代(杉丘のり子)から知らされたので、電話口に出て、泰二ですか?泰二はまだ帰って込ませんが…と答えていたが、そこに当の相川泰二君が戻って来たので、今帰ってきましたよと明智に報告するが、明らかに相川君の様子はおかしく、みんなが声をかけても黙って家の中に上がり込み、自分の部屋のベッドに入るとすぐに寝てしまう。

案じて部屋に入ってきた母親(檜有子)と姉の春美(古賀京子)が、泰ちゃん、具合でも悪いの?などと話しかけるが、こんこんと寝てしまったので、様子を観に来た相川技師長にも、遊び疲れですよと母親は笑って言う。

その後、相川君の様子を観に来たマリ子と少年探偵団の仲間たちは、相川技師長や春美と共に、夜まで、雑誌に載っていた探偵クイズを解いて楽しんでいた。

春美がクイズを解いてみせると、凄いな、絶対探偵の素質があるよ!などと、少年たちは褒める。

そこに、母親が果物を持って来て、せっかく皆さんに来てもらったのに、泰二はまだ寝てるんですよと困った顔で言う。

ドアが音もなく開くよ!などと、マリ子がクイズの穴空き文を読んでいると、相川君の扉が、同じように音もなく開いていた。

現れた人影は忍び足で…などと、春美と相川技師長もクイズを解いて行くが、その言葉通り、部屋の外では、人影が忍び足で廊下を歩いていた。

その足は相川君のようだった。

廊下を階段に…ですよ!と、次を篠崎君が続けると、その言葉通り、暗闇の中を歩いていた相川君は階段を登り始める。

寝室の前に立ち止まっただろ?と続きを篠崎君が推理すると、その言葉通り、相川君は扉の前に立ち止まえい、部屋の電気を点けると中に入って行く。

しかし、何しに行ったんだろう?それが分かったらお慰みだ!などと小林少年たちが笑っていると、二階から物音が聞こえて来たので、何でしょう?と廊下に出て屋敷内の様子を見回した母親は、あなた、書斎の電気はつけたままですか?と相川技師長に聞く。

点いてますよと母親が言うので、怪しんだ相川技師長以下、少年探偵団の面々も二階の書斎に向かうと、何と、相川君が金庫の中から「極秘」と書かれた書類を取り出しているではないか!

何をしてるんだ?これはお父さんの大事な物なんだよ。どうしようと言うんだい?と声をかけた相川技師長だったが、相川君は何も答えず、探偵団の仲間たちが止めようとするのも振り切って窓際に逃げて行く。

そこには、いつの間に現れたのか、魔法使いのような老婆が立っており、相川君から書類を受け取る。

驚いた相川技師長は壁にかかっていた猟銃を取り、安全装置を外すが、老婆が相川君を盾にしたので母親が止める。

小林少年が老婆に飛びかかるが、杖で打ちのめされてしまう。

老婆は、相川君を抱えると、ベランダから夜の闇の中へ消えてしまう。

母親は、泰二!泰二!と絶叫し、少年探偵団は急いで後を追いかけ始める。

マリ子が裏口よ!と声をかける。

相川君を小脇に抱え、驚くようなスピードで走る、白い装束の老婆を、小林少年や篠崎少年等も必死に追う。

一旦は暗闇に隠れ、小林少年等をまいたと思っていた老婆だったが、突然、小林少年が放った投げ縄を首にかけられる。

その縄を自らの方へ引き寄せる老婆。

老婆に地面を引きずられながらも決して縄を離さない小林少年は、呼び子を吹き始める。

それを聞いた隊員たちが、団長!と言いながら、小林少年の元に駆けつけて来る。

少年たちは力を合わせ、小林少年が握っていた縄を引きながらその先の方へと進んで行くが、綱の先は大木に結びつけられていた頃に気づく。

周囲を見回しても、もはや老婆も相川君の姿もなかった。

警視庁の緊急指令が飛ぶ。

警視庁から各局!

麻布榎町相川邸より、秘密書類を奪った怪人二十面相は、10時25分、当邸より逃走、直ちに警戒をせよ!

指令を受けたパトカーが旋回し、動きを早める

怪人二十面相は海上に逃れる恐れあり、水上各局は特に注意せよ!

水上監視艇も出動する。

提灯を持った警官たちが車の検問をする。

翌朝の朝刊には、「何を狙うか怪人二十面相」「原子力工場技師長 相川氏宅を襲う 白髪妖婆の変装で」「息子泰二君謎の謎の行動 二十面相と共に行方不明」と言った文字が踊っていた。

「国立原子力工場」に詰め寄せる記者たち

そんな中、工場内では臨時の会議が開かれていた。

相川技師長は、設計図は念のため、半分に分けて保管しており、盗まれたのは半分だけで、残りの半分は無事だったと、主席していた中根法務大臣(明石潮)に報告する。

警視総監(斎藤紫香)は、捜査の関係上、書類の内容を聞かせてくれませんかと発言したので、相川たちは内輪で話し合いを始める。それを観ていた中根法務大臣は、これはあくまでも秘密と言うことを前提にしてくれた前と総監に念を押す。

中根が頷いてみせると、相川は設計図の概略を話し始める。

この研究は死の灰を消滅させる物だと言う。

法務大臣から、これは世界中で研究中なんだと聞かされた警視総監は、これを国外に持ち出されては一大事です。我が国の警察力の総力を挙げても、二十面相が残りの図面を盗む前に捕まえますと確約する。

明智さん、あなたは二十面相を最も良く知る人物だ、見解を聞かせてもらいたいと法務大臣方聞かれた明智は、まず第一に焦らない事ですと言い出す。

でも設計図の半分は奪われているではないかと中根法務大臣が言うと、いや、それだからこそ、我々が焦るのは奴の付け目なんです。二十面相と言えども、全ての設計図を手に入れ日本を脱出するまでには何らかの輸送を行います。我々はそれを待って、一挙に逮捕するのです。これは私が十分な清算の元に申し上げているのです。二十面相は必ず動きますと明智は言う。

そんな中「国立原子力第一工場」に、英国帰りの殿村弘三と称する見知らぬ探偵がやって来る。

殿村は、事件を三日以内に解決してみせると豪語する。

約束の期日、殿村は、相川君の父親と中村部長を、怪し気な屋敷に連れて行き、見事に、石膏像の中から、誘拐されていた、相川君ら少年探偵団メンバー、さらに、盗まれていた設計図も見つけだしてしまう。

そんな現場にどこからか殺到してきた新聞記者たちの中から、「肝心の犯人は?」と問いかける一人の男の姿があった。

眼鏡を取ると、何と、それはかの明智小五郎、その人であったのだ!