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死の十字路

1956年、日活、江戸川乱歩原作、井上梅次監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある年の二月下旬、建設会社の社長、伊勢正吾(三國連太郎)は、秘書でもある愛人、春美(新珠三千代)のアパートを訪れる。

春美は、新興宗教に凝って正気を失っている伊勢の妻、素子(山岡久乃)からの度重なる脅迫状に怯えていたのであった。

そんな春美が入浴中、当の素子がそのアパートへ突如訪れ、驚愕する伊勢にナイフを突き付ける。
そのナイフを奪い合う最中、伊勢は、素子の首を圧迫し過ぎ、相手が死んでしまった事に気付く。

伊勢は、策をめぐらせ、春美を素子に扮装させ、熱海の鏡が浦で自殺したように偽装させると共に、自分は素子の遺体を車のトランクに詰め込み、三月一日に入水が開始される藤瀬ダムへと向かう。

その頃、とあるバーで、自分の妹と付き合っている商業画家、間下幸男と口論揉み合いの末、洗面台に頭をぶつけて昏倒した画家、相馬良介(大坂志郎)が、ふらふらと立ち上がると、そのまま表へ歩き出していた。

ある十字路に差し掛かった時、伊勢の車はトラックと接触事故を起こしてしまう。
近くの交番で、伊勢が事故処理を済ませている間に、路肩に止めてあった伊勢の車に、かの相馬がタクシーと勘違いして乗り込み、そのまま後部座席であろう事か絶命してしまう。

そんな事とは露知らず、車を再発進させた伊勢は、途中で後部座席の異変に気付いて驚愕する。

訳が分からないものの、状況が状況だけに、そのまま伊勢は目的地へ車を走らせると、水没間近の村落内にある石切り場の井戸へ、二人の遺体を放り込んで帰宅する。

それから二ヶ月後、兄の失踪を心配する妹、相馬芳枝は、画廊の前で兄そっくりの男に出会う。

その男は、警視庁を退職後、私立探偵を始めていた南重吉(大坂志郎-二役)と名乗り、相馬良介の失踪を調査したいと願い出るのであった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

非常に優れたサスペンスドラマに仕上がっている。

前の犯行を隠ぺいするために、新たな犯行をくり返して行く主人公の哀れな姿を、三國連太郎が好演している。
まだ、顔は若々しいのだが、老けメイクで中年に扮している。
それでも、後年のイメージと重なって、不思議と違和感はない。
後年の名作「飢餓海峡」(東映、1965)にも通ずるキャラクターであるのが興味深い。

二役ともクセのあるキャラクターを演じ分けている大坂志郎のピカレスク振り、さらに探偵南の友人で、警視庁の花田警部を演じている安部徹など、後年のイメージとは、かなり違う姿が観られるのも珍しい。

あまり知られていない作品だが、かっちりした作りの秀作に仕上がっているのが見事である。