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さらば宇宙戦艦ヤマト

1978年、オフィス・アカデミー、藤川桂介+山本英明脚本、松本零士+舛田利雄脚本+監督作品。

拙い技術のテレビアニメを、ただ再編集し直しただけの「宇宙戦艦ヤマト」が空前の大ヒットをしたため、当然、大いなる国民的期待を受けて製作された、劇場用オリジナル続編が本作である。

相当無理なスケジュールで作ったと想像されるが、劇場用シリーズ中では、一番まとまった娯楽作になっていると思う。

前作でお馴染みだったメンバーたちが再結集し、各々、見せ場が用意されている設定など、ファンの心理を突いた演出が泣かせる。

クライマックスで、正体を現した白色彗星の本体、その細かい窓を表現するきらびやかな透過光表現など、大スクリーンならではの見せ場も用意されている。

基本的には、一作目同様、一方的な侵略で、滅亡の危機に立たされた民族が、援助の意向を発する他民族の協力を得て、敵を粉砕する…というパターンなのだが、本作では、名作といわれているオリジナルのテレビシリーズのメッセージ性よりも、微妙に「好戦的」「復讐劇」の色合いが強くなっているのが、限られた時間でまとめなければならない劇場版の宿命とはいえ、賛否の反応を生んだ。

特にラストの、特攻礼讃とも受け止められかねない描写などは、当時、大人たちの間で物議を醸し出した事も事実。

平和ボケの昭和元禄時代に作られていたため、この作品が直接的に社会に悪影響を与えた…というような事にはならなかったが、この2年後に作られた、同作と同じ舛田利雄監督による東映作品「二百三高地」など、時代錯誤的な戦争映画でさえ、センチメンタルな主題歌と、大砲などの兵器類をマニアックに紹介するなど…「ヤマト人気」に便乗したような戦略で、子供達にも浸透し、ヒットしてしまった事とを考えれば、あながち、大人たちの心配が杞憂だったとばかりはいえないかも知れないが…。

こうした好戦指向に憂えた一部のアニメ作家たちが、この作品を反面教師として、次の時代を象徴する「ガンダム」や宮崎アニメを生み出して行った事は有名。
共同監督の一人、松本零士氏が、翌1979年に「銀河鉄道999」をりんたろう監督で、「ヤマト」の西崎プロデューサーとは離れて作り、これまた大ヒットさせたのも、本作の方向付けに対する意見の相違があったからではないか…などとも憶測を呼んだ。

ただ、この作品に限らず、戦争映画やヒーローものなどの面白さには、「好戦性」が、その根底にあるのも否定できない事であり、当時、本作だけが突出して、その批判の矢面に立たされたのも、あまりの大ヒットゆえではないか…とも思われる。

当時のこうした事情を知らない世代の人にとっては、どうって事ない、ごく普通の娯楽SFアニメにしか過ぎないと感じる程度かも知れないが…。

なお、本作とは別に「ヤマト2」というテレビシリーズも製作された。