1964年、大映京都、三隅研次監督作品。
御存じ、柴田練三郎原作、市川雷蔵主演「眠狂四郎」シリーズの第ニ弾。
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新年、初詣での人並みでごった返す神社の境内。
空中に女の着物の破片が舞い上がり、裸の女が群集の中に消えて行く。
狂四郎の懐から財布をすろうとした女スリであった。
一方、階段を登る老人たちの尻押しをして稼いでいる少年。
実は、道場を開いていた侍の子供ながら、その父親が道場破りに殺害されてしまい、その後、住む家もなく、自分一人で生きているのだと、茶店の女から話を聞く、一人の老人と狂四郎。
狂四郎は、その子供と老人を連れて、件の道場へ向かい、今は、その道場主となっていた子供の仇を、父親の流派と同じ技で破ってしまう。
この事がきっかけとなり、狂四郎は老人と気安くなるのだが、その老人が暴漢に襲われた事で、彼こそが、時の勘定奉行、朝比奈伊織(加藤嘉)であった事が分かる。
朝比奈は、打ち続く凶作、貧富の差の拡大など、経済の危機状態を憂い、幕閣の中唯一人、倹約政策を押し進めようとしていた。
この動きを憎んでいたのが、化粧代さえ打ち切られた、上様の側女、高姫(久保菜穂子)と、その御用人、白鳥主膳(須賀不二男)であった。
狂四郎は、そんな朝比奈の身辺を守ろうと、絶えず、彼に付き添うようになる。
一方、主膳は、捕縛された異国人の夫を救おうとする、占い女、采女(うねめ、藤村志保)を利用し、狂四郎を倒す侍たちを集める。
さらに、高姫の愛人、増子紋之助(成田純一郎)や、狂四郎に殺害された道場破りの弟などが、狂四郎殺害のため集結して来る。
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娯楽映画としては、全体的に、やや地味目というか、大人しい印象がある「眠狂四郎」シリーズの中にあって、本作は、かなり見せ場が多く、始めてこのシリーズを観る人にも楽しめるのではないか。
行政改革に最期の情熱を傾ける老人と狂四郎との、一見ミスマッチな友情が興味深い。
わがまま放題な姫君を演じる久保菜穂子、狂四郎を付け狙う藤村志保、狂四郎に笑顔を与える、蕎麦屋の娘、おつや(高田美和)らが、各々違った魅力を見せる所にも注目。
回想シーンの中で、捕縛され、石段を歩かされる異国人(采女の夫)に、多くの群集の中から見い出され、その人間的な寂しさを指摘される狂四郎の戸惑いが印象に残る。