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幕末太陽伝

1957年、日活、田中啓一+今村昌平脚本、川島雄三脚本+監督作品。

この作品は、一般にフランキー堺主演の「喜劇」と認識されているが、今風のコメディとは異なり、堂々とした人間ドラマである。


落語の元ネタを下敷きにはしているが、独自の世界を構築しており、その中で蠢く若い俳優たち各々の生き生きとした描写は、今でも鮮やかに伝わってくる。


胸を患っているにも関わらず、金がなかった事から遊廓に居残って、何かとそこに集まる人たちの中に入って世話を焼く、フランキー堺演ずる佐平次の姿は、実に前向きで生き生きとしており、人間として普遍的な魅力を表現している。


演出も見事なら役者の才能も全開で、モノクロ画面ながら、とにかく観る者をぐいぐいと物語の中に引き込む演出力は大変なものである。
後年の名優たちが、さりげなく出演しているのも驚きで、岡田真澄や、石原裕次郎、小林旭、二谷英明、南田洋子、金子信雄など、キラ星のごときオールスター総出演の魅力が作品の幅を拡げている。


それらの人々が、全員信じられないほどの若さで生き生きと写し出され、観る者を圧倒する。


日本映画が絶頂期にあった頃の、正に時代を超える力を持った傑作人間ドラマだと思う。


ラストの佐平次の姿も印象的。

1957年、日活、山内久+川島雄三+今村昌平脚本、川島雄三監督作品。

製作再開3周年記念作品

品川宿

馬二頭が街道を走り抜け、その後を浪人風の若者数名が追いかけて行く。

その侍の1人が落としたらしい巾着袋を拾ったのは佐平次(フランキー堺)だった。

中を改めると、珍しい外国製の懐中時計。

それを懐にしまった佐平次は、物騒な世の中だと呟く。

現在の品川付近の風景を背景にタイトル

鉄橋と京浜国道である…とナレーションが入る。

品川横通りにある北品川カフェ街には、一ヶ月以内に閉鎖される赤線地帯がある。

今から、現代の売春を語ろうというのではない。

文久2年の品川である。

後6年で命じになる幕末の時代…

「相模屋」と言う遊郭に、兄貴大丈夫か?とおどおどしている気病みの新公(西村晃)ら仲間連れでやって来た佐平次は、酒と料理と女をたっぷり用意してくれと注文する。

そこに、女郎のおそめ(左幸子)が来る。

一方、別の部屋には、先ほど馬で逃げた2人の外国人を追っていた志道聞多(二谷英明)や伊藤春輔(関弘美)ら血気に逸る浪人たちが集まっていた。

先に部屋で寝転がっていたのは、高杉晋作(石原裕次郎)だった。

異人館に技師が集まっているなどと話している志道に、大きな声を出すな!と注意すると、巻きタバコを吸い始める。

その頃、相模楼主伝兵衛(金子信雄)は、徳三郎は今日、帰って来ないのかい?と外泊した息子のことを心配していた。

そんな相模楼に、目明しがやって来て、宿改めすると言い出したので、若衆の喜助(岡田眞澄)が、その案内をすることになる。

この店の女郎の中でも人気を競い合っていたおそめとこはる(南田洋子)は、ライバル心むき出しの間柄だった。

おそめに近づいたやり手のおくま(菅井きん)は、明日は、荒神様の祭りだよ。あんたは客の選り好みが過ぎると注意していた。

小平次一行は、飲めや歌えのドンちゃん騒ぎの最中だったので、宿改めに部屋を覗いた目明しも、まあ良いがな…と目こぼしをしてやる。

続いて、喜助して来たのは、こはる相手に三味線を弾きながら一人都々逸を歌っていた高杉晋作の部屋だった。

志道たちは、窓の外枠にしがみついて身を隠していたのだ。

晋作の小細工に協力してやっていたこはるは、目明しが去って行くと、自分もすぐに他の客の所へ急ぐ。

部屋に戻って来た志道に、時計のことを聞いた高杉だったが、忘れて来たと志道は答える。

「高杉春風」と銘が入った刀を抜いた高杉晋作は、焼き討ちをやろう!御殿山の異人館だと言い出すが、そこに入って来た久坂玄瑞(小林旭)が、気をつけろ!声が筒抜けだと注意する。

久坂以外は小便に立つが、先に便所で小便をしていたのは小平次たちだった。

志道に気づいた小平次は、時計は預かっていますと耳打ちする。

酔った志道は、御主、時計は忘れて来たと言っていたな?と責め、何かと上海帰りの話をする高杉に、上海帰りをひけらかすな!と文句を言う。

部屋に戻り、拾った懐中時計の裏蓋を開け、小平次が筆の先で掃除をしていると、酔った志道が取りに来るが、酔った勢いで時計を返せと無礼なことを言っていた志道を高杉が追い返すと、小平次に詫びるのだった。

小平次は、この時計はそれなりの値段で買い戻してもらいたいと告げる。

部屋に戻る途中、泥酔した志道は階段から転げ落ちてしまう。

翌朝、妙に日本人離れした風貌ながら、品川生まれで品川育ちの生粋の品川っ子を自認する喜助が夕べの勘定の催促に来ると、1人部屋に居残って寝ていた左平次は、明日の朝にしてくれと迷惑そうに追い返す。

そこへおそめが来て甘えるが、左平次は相手にしない。

左平次は、胸の病には品川が一番だなどと言ってとぼける。

店の外には、スコットランド兵が通り過ぎていた。

伝兵衛とお辰は、太鼓を叩いてお祈りをしている。

その時、おひさの父である大工の長兵衛(植村謙二郎)が、店に借金のカタとして預けていた道具を持って帰ろうとしているので、それを見つけたお辰は、娘を売るってことだね?と嫌みを言う。

その頃、生臭坊主の悠念(山田禅二)が、こはるに明日来ると言い残して帰ると、こはるは清七(加藤博司)の相手をした直後、すぐに仏壇屋倉造(植村謙二郎)の部屋に向かい、お前だけが頼りなんだから…と涙を見せて甘えてみせる。

しかし、部屋を出たこはるはけろっとした顔つきで、歌いながら次なる部屋に向かう途中、うっかり左平次の部屋に入りかけると、おや、ごめんやね!とおどけて出て行く。

左平次が起き出して窓から外を観ると、川に浮かんだ犬の死骸が浮かんでいる。

喜助の代わりのものがお代の催促に来るが、左平次は、夕方に3人来るんで、その時に飲んで、きっぱり払うと約束する。

そんな中、伝兵衛の義理の息子で遊び人の徳三郎(梅野泰靖)がふらりと帰って来て、商売の勉強で出ていたが、北国は良いですよなどと報告するが、その背後には吉原の人間が付いて来ており、善八(織田政雄)に貯まった勘定を払わせようとする。

相手にされないと分かると、勝手に店の銭函を振り回し始めたので、女郎買いにばかりうつつを抜かす徳三郎に堪忍袋の緒が切れた伝兵衛は勘当を言い渡す。

そんな徳三郎に言われるまま、お久は茶漬けを用意してやる。

その頃、店の女郎たち相手に、貸本屋のあばたの金造(小沢昭一)がやって来て商売をしていたが、佐平次は昼風呂に入ろうとして、先に入っていた高杉晋作と一緒になる。

髪結い中の女郎たちには、呉服屋(小泉郁之助)が商売に来ていた。

そんな中、おそめとおひさが口喧嘩を始める。

2人の喧嘩は二階の廊下に登って壮絶な戦いになる。

一方、高杉晋作と一緒の湯船に浸かっていた佐平次は、「三千世界のカラスを殺し、ぬしと朝寝がしてみたい♬」と都々逸を歌ってみせるが、晋作は、それは俺が作った歌だ。目の前で歌われると照れると言う。

おそめはおくまと、良い客ないかね?などと話し合っていた。

1人で今死んだら、金につまって死んだって言われるに決まっている。いっそのこと心中でもしようかしら?誰か連れて行っても良い人いないかね?など虫の良いことを言っていたが、おくまが、金ちゃんなら、どうせ1人者だし…と無責任な発言をする。

そんなことは知らない貸本屋の金造は、心中ものの本など女郎たちに紹介していたが、おそめが呼んでいるよと二階からおくまが声をかける。

晋作は、懐中時計の受取状を書いていた。

その夜も、「相模屋」は盛り塩をし、下足番が客を待つ準備を始めていた。

入浴している徳三郎と、外で薪をくべていたお久が会話をしていると、そこにやって来たお辰が、自分のことを息子が鬼婆などと悪口を言っているので叱りつける。

一方、おそめの部屋で寝ていた金造は、おそめから起こされ、心中するよと言われるがまま白装束に着替えさせられるが、生地代が足りなかったのか下半分がない。

おそめがカミソリを用意しておいたと持ち出すと、それは痛いし、治療がしにくいと金造が渋るので、最初から死ぬ気がなかったんだねと睨みつけ、1人で死のうとするので、金造は慌てて止めると、それじゃあ、入水しようと、店の裏の川に向かう。

金造も嫌々ながら同行して来るが、おそめがそんな金造を先に川に突き落とした所に、おくまが金が出来た!と言いながら止めに来る。

おそめは慌てて、金ちゃんやっちまったよと後悔するが、おくまは自分たち2人しか知らないよとごまかしておそめを店に連れ帰る。

その直後、予想外に浅瀬だったので、「悪く思うわ!」と言いながら川の中に立ち上がった金造は、手に持っていたのが猫の死骸と気づき、慌てて捨てるのだった。

荒神様の当日、おそめが熱を出して寝込んでいると、おくまがやって来たので、おそめはひどい目にあったよ夕べ…、金ちゃん、許しておくれと詫びる。

その日も、灸を据えていた佐平次の部屋に喜助がやって来て、溜まっている代金の催促をすると、佐平次は自分は懐に一文を持っていないし、連れがどこに住んでいるのかも皆目分からないなどと言い出したので、今まで騙されているたと気づいた喜助は泣き出してしまう。

喜助の失態を知った伝兵衛は、善八の給金を半分にすると言い出す。

その勘定場にやって来た佐平次は、穴埋め勘定は出来ていると言いながら、通風を起こした伝兵衛を揉んでやる。

そこにやって来た徳三郎まで揉んでくれと佐平次に頼む始末だったが、佐平次が行灯部屋に案内してくれと言い出したので、善八が連れて行ってやる。

粗末な部屋の中に入った佐平次は嫌な咳をし始める。

その夜、「相模屋」の表を馬が慌ただしく駆け抜ける。

志道聞多らは、長州の鬼島又兵衛(河野秋武)に遭遇していた。

横浜村からわざわざ来ている所を観ると、女郎屋に来たと思われるので、3人は面白がる。

その頃、すっかり「相模屋」の手伝いになった佐平次は、料理を運んで部屋から部屋へと飛び回っていたので、それを見つけた喜助は、あいつ、いつの間に部屋番まで?と唖然としていた。

佐平次が晋作の部屋に来ると、志道らが時計を分解してどうしようも出来ない様子だったので、それを自分が修繕してやる。

やがて、善八を叱りつけていた伝兵衛の元に、その懐中時計を部屋代の代わりにと持って来た佐平次は、6、70両くらいにはなりますと差し出す。

その手腕を見た伝兵衛は、少しは見習えと善八に文句を言う。

お辰は、祝儀はやったつもり…と一文も佐平次にやろうとしなかった。

その後、佐平次はおそめから面倒な男客の始末を頼まれる。

おそめは、清七と仏壇屋倉造の部屋を行き来していたが、便所で遭遇した清七と仏壇屋倉造は互いに驚く。

2人は親子だったからだ。

清七の部屋に来た倉造は、まだ若いのにこんな所に来てと説教を始めるが、清七はおそめからもらったという夫婦の誓いを書いた起請文を出してみせるが、倉造も同じものを持っていた。

別の部屋に来ていた鬼島又兵衛も、同じ起請文を持っていると佐平次に見せながら、今この店には、他の長州者は来ていないだろうな?と確認する。

佐平次はその後、廊下で会ったおそめにほっといても寝ますよと鬼島のことを耳打ちする。

おそめが倉造の部屋に来ると、急に倉造がお前からもらった起請文を返すと言い出す。

おそめが不思議がると、押し入れに隠れていた清七が出て来て来たので、驚いてしまう。

聞けば、清七は倉造の奉公に出している実の息子だと言うではないか。

そこに佐平次が呼ばれて来る。

わっちは世界中のカラスを殺すつもりさと開き直っていたが、そこにやって来た佐平次は自分も起請文と出刃を取り出したので、清七と倉造は、おそめが刺されると思い、止めに入るが、その間におそめは部屋から逃げ出してしまう。

部屋に残った佐平次は、清七と倉造の前で、店をしくじったと泣く芝居をしてみせると、それを真に受けて同情した倉造は、お互い良い戒めになりましたなどと言いながら、小銭まで佐平次に恵んでくれる。

その頃、晋作たちは、異人館焼き討ちにために焼き玉を準備しなければならないと相談し合っていた。

こはるは、清七と倉造との問題を解決してもらった礼に、佐平次に小銭を渡していた。

その後、こはるは証文を3枚3両で買うと言い出し、佐平次は女郎は客を騙すのが商売!などと言いながら、客から証文を買い始めていた。

雪の日、「相模屋」の前を御用党だと言う罪人が、鈴が森の刑場へ引き立てられていくのをおひさたちが見ていた。

佐平次は部屋で火薬をこしらえていた。

さらに、版木で刷った証文を200文で買いましょうなどと言っていた。

喜助は、そんな佐平次の悪口を仲間と話していた。

おそめの部屋にやって来たおくまは、川に落ちたはずの金公が来ましたよ。6番に入れて来たけど、青い顔していたと不気味そうに言う。

信じられずにおそめが6番の部屋に入ると、あばたの金造が幽霊のポーズを取って待っていた。

金造は、おらは実は死んだだよ。1度死んだけど、生き返って来たんだと言い、心持ちが悪いから横になると言って、布団に寝る。

おそめは廊下に出て待っていたおくまに金を渡して酒を頼むと又部屋に戻るが、布団の上には位牌が置いてあるだけだった。

おそめは悲鳴を上げ玄関口まで逃げて来るが、そこには棺桶を担いだ男たちが待っていた。

その男たちが棺桶を開けてみると、その中にはあばたの金造が入っているではないか。

この始末どうしてくれる!と怒鳴る男たちの前に出て来た善八が、お香典代わりにと金を包んだものを手渡そうとすると、そこにやって来た佐平次があば金の死体にお湯をかける。

すると、あば金は熱がり棺桶を飛び出すと、担いで来た男たちと遺書に逃げ出してしまう。

品川じゃ、こんな子供騙しはやらないぜ!と3人の背後から啖呵を切った佐平次だったが、後でこっそり、あば金たち3人に会うと、小遣いを手渡す。

そして店に帰って来た佐平次は、さっきの棺桶は割り箸にするから裏に置いておいてくれなどと言い出す。

咳き込みながら行灯部屋に戻って来た佐平次に、おそめが金を手渡す。

佐平次が薬を飲んでいることに気づいたおそめは急に甘えかかる。

その頃、大工の長兵衛が道具箱を返し、証文に判を押していた。

結局おひさを売ることにした長兵衛を徳三郎が叱りつける。

そんな徳三郎に博打は止めろよと良い聞かせながら金を渡した伝兵衛とお辰だったが、徳三郎はかね次(高原駿雄)たちがやっていた花札勝負に参加する。

帰って行く大工の長兵衛に駆け寄ったおひさは、ひー坊に凧でも買ってやってくれと金を渡す。

徳三郎は、佐平次と花札で勝負をし、3分を貸してくれ、おひさを取り戻したんだと言う。

しかし、あっさり負けて身ぐるみ剥がされた徳三郎に佐平次が良いことがあると耳打ちする。

出先から帰って来た伝兵衛は、博打で負けた徳三郎を見ると口論になり、そのまま倉の中の牢に入れてしまう。

そんな徳三郎に、おひさが握り飯を持って来てやると、若旦那、私をおかみさんにして下さい。女郎にされるよりは…、借金も帳消しになるし…、50両なんて大金返せなんて…、駆け落ちして下さいと言い出す。

おひさは、居残りさんに頼みますという。

夜中、川の向こう岸の方から爆発音が聞こえて来る。

焼き玉の実験をやっていたのだった。

翌日、晋作は志道に明日決行だと言い聞かせていた。

久坂玄瑞は文句を言うが、このままでは日本は第二の上海になると晋作は力説する。

久坂と志道が言い争いを始めたので、晋作は同士討ちしている場合か!と叱りつけ、ここは藤八拳で決めようと言い出す。

おひさは佐平次に、徳三郎との駆け落ちを手伝って欲しい。10両差し上げます。今すぐじゃなく、1年に1両ずつ10年でと相談していた。

しかし、それを聞いた佐平次は、この御時世、世の中は変わりますぜと忠告する。

晋作たちの部屋に戻って来た伊藤たちは、焼き玉の件でヒゲだるまが小便をしていて捕まった。大和も番所にしょっぴかれた報告に来る。

彼らは焼き玉を5つも持っていたと聞いた久坂は、すぐに決行しようと言い出す。

そこに、すす払いと称しては言って来た佐平次は、たどんの減りが早いと思っていたなどと言いながら、棚に置いてあった焼き玉を持って行こうとしたので、それを制した志道は、佐平次が部屋を出て行った後、臭いな?公儀隠密ではないか?と佐平次を疑い出し、それを聞いた晋作も、俺が斬ると言い出す。

おそめ、こはる、おくまが風呂に入っていると、外では佐平次が風呂番をしていた。

その後、川に浮かべた小舟の上で晋作と会った佐平次は、異人館を焼こうとあっしには関係ありません。お侍は町民から巻き上げた金で攘夷の何のと騒いでいますが、あっしらは首が飛んでも動いてみせまさぁ!と啖呵を切る。

そして、船の底の栓を抜こうとして見せる。

そして佐平次は、細工は流々と呟くと、店に戻り、鬼島又兵衛の部屋にお目当てのこはるを連れて来てやると、志道も呼んで来る。

さらに佐平次は、おひさに会うと、親爺さんの道具箱があるだろう?あの中にのこぎりでもなんでもあると教えてやる。

鬼島の部屋にやって来た志道は、金子百両を出してくれ、その懐中にはこはるの手紙と…と頼む。

52歳にもなって、こんな恥辱を受けるとは…と鬼島は泣き出す。

晋作たちの部屋には、ヒゲだるまが戻って来て、あの焼き玉は食べて来たと言いながら、窓から苦しそうに吐き始める。

そこに、まんまと鬼島から百両をせしめて来た志道が戻って来る。

一方、おひさが徳三郎が入っている牢をのこぎりで切っていると、伝兵衛にこのことを告げ口して倉に連れて佐平次がやって来る。

おひさの行為を発見し怒った伝兵衛は、おひさも徳三郎と一緒に牢に閉じ込める。

佐平次は寝ずの番をしていますと志願し、伝兵衛から鍵を受け取る。

夜、おひさの父長兵衛の道具箱を持って牢の前に戻って来た佐平次は、おひさに頼みを聞いてくれと言い出す。

懐中時計が11時を指していた。

高杉晋作の部屋にやって来た佐平次はおひさに書かせた異人館の絵図面を渡す。

晋作は、決行の時は一時後と決める。

そんな晋作に佐平次は、絵図面の代金ともう一つと願い出る。

牢の中の徳三郎がおひさにちょっかいを出そうとしていると、戻って来た佐平次が鍵で牢を開け、2人を逃がしてやる。

川に浮かんだ小舟で待っていた晋作の元に徳三郎とおひさを連れて来た佐平次は、2人の祝言をしてやってくれと頼む。

竿を握っているのは志道だった。

船に乗り込んだ徳三郎に、決して人を信用しないようにと念を押す佐平次に、晋作は懐中時計を壊れたと言って手渡すが、おぬし、悪い咳をしておるが、持つか?と問いかけ、船を出発させる。

船を送り出した佐平次は、さあすんだ、今度は俺の番だと呟くと、店の中を忙しげに走り回る。

そんな佐平次に、こはるとおそめが、それぞれ用があると耳打ちして来る。

その後、御殿山の工で火事騒ぎがあったらしく火消しが走る。

二階からその様子を眺めていた喜助は、やっぱり異人館は燃えが良いねと嬉しそうに言う。

火事見物をしている授業員たちに、大仕舞いだよと叱りつけるお辰。

こはるとおそめは、いのさん!と佐平次を呼ぶ。

行灯部屋まで押し掛けて来た2人に、佐平次は、早立ちでここを発たなきゃいけないのだという。

そんな佐平次に、どっちが好きなのさ?とこはるとおそめが迫って来る。

すると佐平次は、自分は横浜村の出身で労咳なのだと打ち明け、ヘボン先生に付いてアメリカに行くつもりだという。

こはるとおそめが起請文を取り出すと、証文なら売るほどござんすと言って、佐平次は懐から印刷した証文の束を取り出してみせる。

そこに、喜助が客の始末で頼みに来る。

6番部屋にいたのは千葉の杢兵衛大尽(市村俊幸)と言う男で、こはるが病気だというがどんな具合だと言うので、佐平次は死んだと答える。

驚いた杢兵衛は、寺はどこだ?案内しろと言い出したので、一旦荷物を取ろうと行灯部屋に戻った佐平次は、そこで2人仲良く寝入っているおそめとこはるの姿を発見する。

荷物をそっと取り、障子を閉めかけた佐平次は、そんな2人の寝顔をそっと振り返ってみる。

喜助も、自分の部屋で猫を抱いて眠っていた。

高杉晋作からもらった懐中時計を耳に当ててみた佐平次がそっと店の外に出てみると、そこに先ほどの杢兵衛が待ち受けていた。

仕方がないので、寺に案内する不利をして適当な寺を見つけると、そこの墓がこはるの墓だと嘘をつく。

すると、その墓を拝もうと近づいた杢兵衛は、これは安政の大地震で死んだ人の墓じゃないかと怒り出す。

佐平次は、墓には縁がねえもんだから間違えたととぼけ、別の墓を教える。

杢兵衛は、お前さっきから悪い咳をしているじゃないかと言いながら、別の墓を拝もうとするが、そこには「童子」と書かれていたので、これは子供の墓ではないか!こんなに噓ばかりついていると、地獄さ、堕ちなければならないぞ!と叱るが、そんな言葉を背後に聞きながら寺を抜け出した佐平次は、地獄も極楽もあるけえ!こちとらまだまだ生きてみせるぜ!と言いながら、すたこら夜道を逃げて行くのだった。