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ニッポン無責任時代

1962年、東宝、古澤憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

銀座のバーの片隅で、乗っ取り屋、黒田産業の社長、黒田(田崎潤)が、かん高い声音を持つホステス嬢、京子(中島そのみ)に、太平洋酒の株が誰かによって買い占められている…という話をしています。

そのバーで一人酒を飲んでいた派手な色の背広を着た正体不明の男、後から入って来た大平洋酒の谷田総務部長(谷啓)と大塚(犬塚弘)に気安く話し掛け、両名を煙に巻いたまま、その場を後にするのでした。

実はその男、もっか失業中の平均(たいら・ひとし)。
彼は、太平洋酒の社長、氏家の自宅に深夜押し掛けると、息子の孝作(峰健二=ジャニーズ系の坊ちゃんに見えますが、実は現在の峰岸徹。当時は赤木圭一郎のそっくりさんとして売り出していたらしい。確かに似ている!…という事は、もしもトニ−が今も生きていたとしたら、峰岸徹みたいになっていたという事か?)が、仲間と楽しんでいたギターを取り上げ、いきなり歌い出します!
妻(久慈あさみ)に追い返された平でしたが、その妻の言葉から、翌日、政治家、松山一郎の葬儀に、氏家社長が出席する事を知るのでした。

下宿の大家(人見明)から背広を借りた平、まんまと葬儀関係者になりすまし、氏家(ハナ肇)に近付くと、自分は亡くなった松山からあなた宛の遺言を預かっているとホラを吹きます。

その足で、太平洋酒の社長室にまで乗り込んだ平、言葉巧みに氏家社長の相談役として、社員になってしまったので、社内で再会した谷田や大塚らはびっくり仰天!うさん臭い相手だと、平を警戒するようになります。

しかし、社長秘書の佐野愛子(重山規子)は、不思議なバイタリティを持つ平に興味を抱くのでした。

大塚らは、組合を結成しようと運動を始めますが、それを平に知られてしまいます。
てっきり、社長に告げ口されると思い込んでいた大塚ら社員一同、しかし、平は密告等をしなかった事実を愛子から聞かされ、彼を見直す事に…。

乗っ取りの噂を知った氏家社長、平の発案で大株主の富山社長(松村達雄)を、氏家の愛人であった芸者まん丸(団令子)も利用し手厚く接待し、株を手放さない約束をさせるのですが、その裏で、富山は黒田と密約しており、とうとう、太平洋酒は、山海食品、大島社長の息のかかった黒田に乗っ取られてしまいます。

新社長、黒田の元で出世した平は、ホップの買い付け先、北海物産の石狩社長(由利徹)の接待に奔走します。
最初は、そんな平の事をバカにしていた同僚たちも、この仕事が失敗すると、自分達も首になる運命である事を知り、全員平をバックアップする協力体制に…。

その陰で、平は氏家の社長復帰を画策したり、孝作と大島社長の一人娘、洋子(藤山陽子)の仲を取り持とうと駆けずり回るのでした。

結果、氏家は社長に復帰、孝作、陽子の仲も認められるのですが、うさん臭い男として、平は首になってしまいます。

1年後、孝作、陽子の結婚式に現れたのは、今や、北海物産の社長になっていた平の姿でした!

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一見、荒唐無稽なサラリーマンファンタジーとも思えますが、シリーズ1作目の本作の主人公は「無責任」どころか、意外に面倒見のいい、才能溢れるやり手であった事が分かります。
これだけの、人心掌握術、先見力と実行力、そして度胸があれば、現実の世界でも、それなりに出世するのではないかと思われる程です。
例えば、若い頃の仲代達矢が、真面目な顔をして、この主役を演じたとしたら、それはそれで、野心ドラマとして立派に通用しそうなキャラクターなんです。

基本的には、東宝の人気シリーズ「お姐ちゃんシリーズ」(団令子、重山規子、中島そのみ)の延長線上にある設定ですね。

彼女らが、一人の好青年(例えば、宝田明や仲代達矢…といった当時の若手二枚目)相手に、恋の三角関係を演ずる…といった、ラブコメパターンのお相手が、本作ではたまたま、当時、人気沸騰状態だった若き植木等だった…と見る事もできます。
事実、本作の平等も、何故か三人娘にモテモテ…。

しかし皮肉な事に、その植木の魅力は単なる恋のお相手どころではなかったのですね〜。(笑)
ここでは、三人娘の方が、単なる「添え物」状態。

かくして、植木を主役にした「無責任シリーズ」が始まり、「お姐ちゃんシリーズ」は終結する事に相成ります。

そのくらい、本作の植木等のバイタリティは凄まじく、「スーダラ節」「ドント節」「五万節」「ハイそれまでヨ」「無責任一代男」などなど、挿入されるクレージーのヒット曲の数々と共に、まさしく、今でも、観ていて、そのパワーに圧倒される事請け合い。

ある種、高度成長時代のサラリーマンたちに対する「洗脳映画」ではなかったのか?…と、勘ぐりたくなる程、そのおもしろさは桁はずれていますよ。