TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

魔界転生

1981年、東映、深作欣二監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

天草の乱で殺害された農民たちの死体が累々と積み重なる中、悲運の美青年、天草四郎時貞(沢田研二)の生首が突然目を開ける。

折しも、戦勝祝いをしていた松平伊豆守(成田三樹夫)の一行に落雷が落ち、全員気絶。
能面を冠って舞っていた男が、やおら立ち上がると、仮面を脱ぎ捨てる。その下から現れたるは、あろう事か、蘇った天草四郎!

彼は、夫からの冷たい仕打ちに恨みを残して死んだ細川ガラシャ(佳那晃子)、柳生但馬守との勝負に未練を残す宮本武蔵(緒方拳)、女への煩悩を捨てきれぬ宝蔵院胤舜感(室田日出男)、甲賀ものたちから襲撃され、命を落とした伊賀忍者、霧丸(真田広之)らを次々と、魔人としてこの世に転生させると、幕府転覆のために、全国の田畑を呪いによって枯らし、農民たちの心を操って、江戸へ結集させようとする。

さらに、息子、十兵衛との勝負を心の奥底で願っていた柳生但馬守(若山富三郎)も、その心の隙を天草四郎に見すかされ、魔人として生き返り、そのまま幕府の中核に居座る事となる。

一方、狂人、お玉の身体を借りた細川ガラシャは、夫と生き写しの徳川家綱(松橋登)に接近、まんまと家綱の目に止まり、大奥で、愛欲の日々を送る事に…。
かくして、家綱の心は、側に使える二人の魔人によって、徐々に狂わされていく…。

この陰謀に、唯一人立ち向かうのは、宮本武蔵の臨終の際に、偶然訪れて怪異に遭遇する柳生十兵衛(千葉真一)。

彼は、父、但馬守もすでに魔人になっている事を見抜くと、魔人をも断ち切る妖刀村正を作ってもらうために、刀鍛冶、村正(丹波哲郎)の元を訪れる。
そこには、武蔵に思いを寄せていた、おつうの姪にあたる、同じ名の娘(神崎愛)も同居していた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

両雄、もし戦わば…という、奇想天外なアイデアの山田風太郎原作小説を映画化したものだが、正直、映画としては散漫な感じで、今一つ、盛り上がりにも欠ける出来となっているのが惜しまれる。

特に、緊張感を疎外している要因として、復活した魔人たちが皆弱すぎる点があげられよう。
宮本武蔵など、魔人であるにもかかわらず、タイミングの悪い場面にばかり出没し、ただ、木の閂がかけられただけの村正のボロ家の扉も開けられぬ体たらく。
観ていて、恐さよりも、まぬけな感じさえ抱いてしまう。

魔人なのに、小娘に恋して、駆け落ちまでしようとする霧丸の存在も、今一つ釈然としない。

「霊界の宣伝マン」こと、丹波哲郎が、魔人を相手にしてあまり活躍しないのも、物足りなさの一因。

それでも、この作品を語るに足るとすれば、それは、ジュリ−(沢田研二)と松橋登の美貌振り。
さらに、若山富三郎の軽やかな剣さばきの妙技であろう。

ラスト、炎上する江戸城内での剣劇は見ごたえがある。(一瞬、若山演ずる但馬守の前に、緊張感のない顔の角川春樹が侍役で対峙するトホホ…なシーンもあるが)

話のスケールが大きすぎるために、さすがの深作監督をしても、映画としては、まとめるだけで精一杯だったのだろう。

今の東映の状況を考えると、窪塚版リメイクにも、あまり期待は持てないのだが…。

良くも悪くも、「角川映画」らしい作品の一本…と言えよう。