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運が良けりゃ

1966年、松竹大船、山内久脚本 、 山田洋次脚本+監督作品。

「運が良けりゃ」(1966)は、山田監督にしては珍しい時代劇です。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

時は天明の頃、貧乏長家に住む左官の熊五郎(ハナ肇)、女房が別の男の子供を孕んでしまった八(犬塚弘)、娘を女郎に売った事を悔い、首を吊ろうとする久六(桜井センリ)らは、根っからの貧乏だが、根は明るくバイタリティに富み、いつも悪知恵を働かせては面白おかしく過ごしている仲間達でした。

今日も、呉服屋で長家の大家でもある近江屋の若(バカ)だんな(砂塚秀夫)と連れ立って女郎屋に繰り出し、さんざん飲み食いした後、店主(藤田まこと)をだましてまんまと逃げおうせたり…。

そんな馬鹿丸出しの熊には、19になる気立ての良い妹、せい(倍賞千恵子)がいました。
天涯孤独の兄妹二人は、仲むつまじく暮らしています。

そのせいを偶然籠の中から見かけた大名、赤井御門之上(安田伸)は、すっかりせいに一目惚れし、自分の妾にしようと長家に使いを寄越します。

貧乏長家はもう大騒ぎ!

しかし、熊は大家らと共に大名家に挨拶に出かけた日、飲み慣れない酒を飲んで大暴れ。
「自分の妹は妾などにはやれない!ちゃんとした相手に嫁がせてやるんだ!」と啖呵を切ってしまうのです。

その話をがっかりしながら語る大家らとは裏腹に、せいは嬉し涙を流します。
なぜなら、せいには、淡い恋心を抱く、肥汲みの勤労青年、吾助(田辺靖夫)がいたからです…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「ン?」と思われた方、そう、これ「男はつらいよ」の元ネタみたいです。(確信はありませんが、音楽も山本直純さんですし…)

これまた、この当時の松竹映画にしては珍しくお金をかけた作品で、江戸のオープンセットをかなり大掛かりに作っています。内容自体は「八っつぁん、熊さん」の落語ネタをいくつかミックスしたお話で、コメディと思って観ていると、さほど笑えなかったり…と、まぁ、いかにもこの時代の松竹喜劇ですね。

せいが結婚するまでを、四季のうつろいと共にいくつかのドタバタ騒ぎが描かれていくのですが、後半、ちゃんと渥美清がチョイ役で出てきます。
出番は少ないながら強烈なキャラクター(死人の焼き場の男役)。

東宝のクレージーものに比べ、さすがに主役をはっているだけにハナ肇も一生懸命で、そんなに悪い演技でもないのですが…。(この後の両者の運命を知っているだけに、複雑な気持ちで観てしまいます)

「男はつらいよ」が登場するのは、この3年後の1969年です。
晩年のハナ肇といえば、コントでの「いたぶられるだけの銅像役」のイメージしかない人も多いはず。
(テレビの金田一シリーズでの警部役などもあるにはありましたが…)

ちょっと気になった事。
八の息子役で、2、3歳くらいの男の子が出ているのですが、その顔に何だか見覚えが…。
ひょっとして、テレビ「ケンちゃんシリーズ」のケンちゃん?(何人もいたけど、初代?)