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宇宙大怪獣ギララ

1967年、松竹大船、元持栄美+石田守良脚本、二本松嘉端脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

富士山麓にある日本宇宙局FAFCに一機のヘリが到着する。

待ち構えていた作業員が、そのヘリに積まれていた原子燃料XTU249を基地内に運び込むが、少しのショックでも爆発の危険性がある燃料の扱いに気をつけるよう、ヘリに同乗してやって来たバーマン博士(フランツ・グルーベル)は注意する。

局内でバーマン博士は、盟友の加藤博士(岡田英次)と再開を喜ぶ握手を交す。

FAFC本部では、今正に、火星探索船「AABガンマー号」に搭乗する4人の宇宙パイロットたちに、FAFC技官(穂積隆信)が最後の確認作業を行っていた。

リーザ(ペギー・ニール)には未確認生物の採取、塩田医師(園井啓介)には毎日の乗組員の血液チェック、宮本通信士(柳沢真一)には毎日の定期通信を各々徹底させる。

加藤博士は隊長の佐野(和崎俊哉)に、いかなる場合でも人命最優先を願い出る。

その時、搭乗時間が迫った事を知らせるアナウンスがあり、ロケット台に向う4人たち。

陽気な宮本通信士がペギーをからかえば、ペギーも言い返し、さらに隊長が宮本の昔の失敗話を蒸し返したので、宮本は首をすくめる。

やがて、彼らを乗せたロケットが発射台から飛び立ち、宇宙圏に出たところでカプセルを離脱、アストロボート 「AABガンマー号」がロケットの内部から飛び出す。

無重力場になったため、通信士の宮本が持っていた記録ボードが手を滑り、空中に浮遊しはじめる。

それを取ってやろうと、リーザがシートベルトを外そうとしたので、佐野隊長はリーザに、重力発生装置のスイッチを入れるように命じ、その後、みんなの自由行動を許可する。

FAFCでも、アストロボートが無事安全軌道に乗ったので、一服していた。

加藤博士はバーマン博士に、いままでの火星探査失敗は機体の整備不良のせいとは思えないと話し掛ける。

バーマン博士は、強い磁気嵐が起こったせいで、宇宙船の反応が狂わされたのだろうと推測を述べる。

加藤博士は、そうした異常現象が定期的に起きると言う事は、一種の太陽系彗星のようなものがあるのではないかと持論を述べると、バーマン博士は、偽装衛星による破壊活動かも…と、本気とも冗談とも付かない返事をする。

その頃、アストローボート内では、放射線測定装置で放射線が上昇している事を確認していた。

FAFCからの通信も不調になる。

その時、リーザが宇宙空間に怪しげな光を発見する。

オレンジ色に光るUFOだった。

宮本は、その形状を「半熟の卵焼きみたいだ」と形容する。

そんな中、塩田医師が気分が悪くなっているのに気付いたリーザが介抱する。

佐野は、それでも飛行を続行しようとするので、塩田の治療を優先すべきだと主張するリーザとちょっと言い争いになる。

やがて通信が復帰し、宮本から塩田医師の病状などの報告を受けた加藤博士は、月基地MSCへ向うように命ずる。

月に近づいたアストロボートの船内モニターには、月基地MSCにいる道子(原田糸子)からの映像が入り、誘導ビーコンに乗るように指示される。

モニターに挨拶するアストロボートの4人たちだったが、その中の佐野隊長の顔に気付いた道子は、何故か顔を背けてしまう。

恋人同士のはずの佐野が、マイクに話し掛けると、道子は一方的にスイッチを切ってしまう。

月基地MSCでは、通信員の一人(藤岡弘、)が、アストロボートの侵入スピードが早すぎるので、減速させた方がよいと道子にアドバイスする。

月基地MSCに到着したアストロボートから、病気の塩田医師が医務室に運ばれる。

診察した月基地ドクターのスタイン(マイク・ダニング)は、一種の宇宙病だろうと診察する。

月基地の木村(浜田虎彦)などと共に食堂で食事をする事になったメンバーたちは、月で栽培した果物の大きさに驚く。

リーザは同席した道子に、ドイツ製のイヤリングをプレゼントするが、宇宙船の荷物チェックも受けず、秘密裏にそんなものを持ち込んだ事に、佐野は隊長としてちょっと不快感を示すが、正直、リーザの気持ちに対する感謝の気持ちもあり、複雑な表情になる。

その後、3人のクルーと道子は、月面で飛び跳ねたりする運動を楽しむが、その後、佐野と宮本は、酸素と水素から合成した水を使った基地内の檜風呂に浸かり、リーザと道子はシャワーを浴びる。

道子と佐野の関係に付いて薄々気付いているリーザは、自分も佐野に思いを寄せているだけに、道子に対して微妙な感情を抱いていた。

入浴後、バーでくつろぐメンバーたち。

そこへ宮本が、塩田の交代要員として、ドクター・スタインをアストロボートに乗せ、火星に向う事になったと知らせに来ると、その場にいたスタインは猛烈に抗議し出す。

リーザは佐野に踊らないかと誘うが、佐野はすぐに寝ると部屋に引き下がってしまい、代わって、宮本が申し出たので、仕方なく彼と踊り始める。

翌日、本部からの指示通り、塩田の代わりにドクター・スタインを同乗させると、アストロボートは月基地を出発する。

スタインは、その後もこの任務に不満を持ち続けているようで、単調な宇宙食に八つ当たりを始める。

その時、佐野がかすかな異常音に気付き、スタインのおしゃべりを封ずる。

小さな隕石が機体にぶつかる音だった。

乗組員たちは、光りながら無数に近づいて来る隕石群に気付く。

その内、船体の一部の小さな穴が出来、そこから漏れ出した空気にリーザが引き寄せられてしまう。

FAFCの加藤博士は、月基地MSCからの連絡により、アストロボートが軌道からそれた事を知らされる。

アストロボート内では、壁の穴が自動修復装置によって直り、気絶したリーザもやがて介抱され、目を覚ますが、メンバーたちは、近くに又してもUFOが出現していた事に気付く。

佐野は、アストロボートが、そのUFOに吸い寄せられている事に気付くと、無駄なエネルギー消費をさけるためエンジンを止める。

しかし、それを見ていたスタインは、全速力で逃げるんだ!俺は地球に帰りたいんだ!と叫びながら、自分が操縦桿を握ろうとする。

月基地MSCの道子は、救援機を出した方が良いとFAFCの加藤博士に連絡するが、加藤博士からの、これ以上犠牲者を増やせないと言う冷静な返事に、すでに佐野は犠牲になったのか?と不安感を強める。

その頃、静止していたアストロボート内にいたリーザは、エンジン部に付着している奇妙な胞子状のようなものを見つけ、佐野に教える。

佐野がそれを調べに行こうとすると、リーザも同行を願い出る。

二人は宇宙空間に出ると、エンジン部に付着した光る胞子状のものを一つ採取すると、あとは手で払い除ける。

その二人が船内に戻った時、ようやくFAFCとの連絡が可能になったので、佐野は、船内エネルギーが不足している事、謎の物質を採取した事、そしてUFOが火星方向に戻って行った事を報告する。

加藤博士は、月基地MSCの道子に、救援機に原子燃料XTU249を積んで出発するよう命ずる。

バーマン博士は、光る生物に心当たりは?と加藤博士に尋ねるが、加藤博士はないと答える。

救援機で救出に向った道子は、救援機からエストロボートに乗り移り、原子燃料XTU249を手渡す。

無事、地球のFAFC本部に戻って来たメンバーたちは、宇宙で採取していた光る胞子状のものを、取りあえず研究室内に安置した後、バーマン博士がセッティングしてくれた帰還パーティ会場へ向う。

ところが、そのパーティ会場にいた加藤博士に、FAFC本部から研究室が荒されたとの電話が入り、全員、戻ってみる事にする。

光る胞子状のものを入れていた容器は壊れ、その下のテーブルや床には、まるでレーザー光線の高熱で溶けたような穴が空いていた。

胞子の中の光るものはなくなっていたが、それを包んでいた白い殻のような部分は残っていたので、リーザがそれを掴もうとすると、あっけなく殻は砕け散ってしまう。

さらに側の床には、鶏の足に似た不思議な足跡が残されていた。

それを見た佐野は、あの光るものは、この穴からどこへ行ったんだ?と不安を募らせる。

その頃、近くの発電所では、急に電圧がダウンした原因が分からず不思議がっていた。

その後、佐野、宮本、リーザ、道子らは、近くのホテルでちょっと休憩して行こうと車を泊めるが、入口に近づいたところでホテルの電気が急に消え、中から従業員たちが出て来る。

宮本がその時、箱根方面の山の奥が無気味に光っている事に気付き、みんなに教える。

突如、その山が爆発すると、その向こうから、謎の巨大生物が出現する。

翌朝、箱根に向ってみた4人は、そこに巨大な足跡を発見する。

FAFC本部に戻った彼らは、加藤博士から、箱根の巨大足跡と、夕べ研究室に残っていた謎の足跡は、ぴったり形が一致したと教えられる。

住民たちは避難を開始し、宇宙怪獣は新幹線を襲っていた。

対策本部に招かれ対抗策を尋ねられた加藤博士とリーザは、研究所に残っていた抜け殻と、宇宙船に付着していたものとは同じ物質である事から、その物質を研究すればギララを倒す方策が何か見つかるのではないかと説明した後、「ギララ」と言うのは自分達は命名した宇宙怪獣の名前なのだと付け加える。

ギララは東京に向けて進行を続けていた。

防衛軍の戦車隊攻撃なども、ギララの吐く熱球で次々に破壊されて行く。

高速道路も破壊され、防衛軍はミサイル攻撃やジェット機による攻撃をギララに集中するが効果がない。

そんな中、ギララの上空に飛んで来た民間機が、ギララの火球で破壊される。

世界各国のマスコミは、一斉にギララの事を報道する。

防衛軍のレーザー兵器もギララの前には有効ではなかった。

港にやって来たギララは、港内に停泊中の船を持ち上げ、工業地帯の煙突に投げ付ける。

その頃、残った抜け殻の成分分析を進めていたリーザは、この物質は、高温のホシが爆発して出来たものが、その後急速に冷却されたものではないかと推理する。

加藤博士は、リーザに、その物質を手に入れるため月に向うよう頼む。

その話を聞いた佐野、宮本、道子も同行を願い出る。

かくして、アストロボートを乗せたロケットは、再度、基地を出発する。

東京都内に進撃したギララは、銀座も新宿も壊滅させ、さらに群馬方面に進んでいた。

加藤博士は、月基地MSCに到着したリーザに、ギララを封ずるギララニウムを抽出する実験の進行具合を尋ねる。

リーザは、抽出した物質が、宇宙放射能を完全に反射する事が判明したと報告する。

それ聞いたバーマン博士は、ギララも、その物質で、同じように封じ込められるかも知れないと推測し、加藤博士も、対策本部に計画を知らせる事に賛成する。

そのギララニウムを積み、地球に期間中のアストロボートは、又しても、原因不明の通信不調に陥る。

FAFC本部の加藤博士は、UFOの出現範囲ではないのにおかしいと首をかしげる。

又、強い電波妨害を受けているのかとメンバーたちは推理するが、佐野はエレクトロニクス計算装置の故障だと推測する。

その確認をしようとしたリーザは、放射能測定器を思わず床に落とし、トランクに詰めて置いていたギララニウムが放射線発生の原因だった事を知る。

その頃ギララは、栃木の西北部から猪苗代湖に向っていた。

しかしギララの破壊パワーは徐々に衰えているようで、防衛軍としては、ギララがこのままエネルギー切れになるのを待つしかなかった。

猪苗代湖ダムにやって来たギララは、ダムの送水管を破壊する。

アストロボートでは、道子が、ギララニウムを密閉性が高い原子炉内に入れてみたらどうかと発案するが、佐野は、逆に原子炉が暴走し、大爆発する危険性もあると躊躇する。

その討論を聞いていたリーザは、他に方法がないとしたら?と全員に聞き、みな、これしか方法がない事を知る。

猪苗代ダムを破壊したギララは、進行を反転させ、原子力発電所を壊すと、そのエネルギーを全て吸収し、巨大な赤い光球に変身する。

赤い光球は、空中に飛び上がり、そのまま都内に向う。

空中を飛ぶ、赤い光に照らされたビルなどは次々に破壊されて行く。

対策本部は、赤い光球が西方に向ったと知る。

ダムの中に落ちた赤い光球だったが、その後、そのダム湖から再びギララが出現し、地上に上がる。

加藤博士は、ギララの次の目標は、FAFC本部にある原子燃料XTU249に違いないと予測し、アストロボートに帰還を急ぐよう連絡するが、そのアストロボート周辺に、またもやUFOが出現し、進路を妨害しようとする。

FAFC本部では、加藤博士が、ロケットの発着要員以外のメンバー全員の退去を命じていた。

何とか、基地にたどり着いたアストロボートが持って来たギララニウムが、ヘリで対策本部へ向け運ばれる。

ギララはFAFC本部に接近して来ており、加藤博士は全員に退避するよう命ずる。

しかし、佐野は、XTU249を運び出してギララを誘導しようと言い出す。

そこへ道子が駆け込んで来て、研究資料を取りに戻ったリーザが、破壊された建物に挟まれて動けなくなったと報告する。

全員で、リーザの救出に向うが、大きなタンクがリーザの足にのしかかっており、なかなか救出出来そうにもない。

その窓から、接近して来るギララの姿が見える。

何とか、力を合わせて、タンクを浮かし、リーザを救出した佐野は宮本に協力を頼むと、すぐにXTU249を運び出そうと外に出る。

ジープの後ろに、XTU249を積むと、そのふたを空け、ギララに分かるように放射線を発生させながら、宮本はジープを発車させる。

その間、リーザの足の怪我の応急処置をした道子は、リーザと共に別の車に乗り込み基地を脱出する。

ギララは、佐野と宮本が乗ったジープを追い掛けて来て、XTU249を掴もうとする。

宮本は佐野に言われるがままスピードを上げ、何とか、基地から遠ざかろうとするが、結局、ギララにXTU249を奪われ、佐野も宮本もジープから振り落とされる。

その頃、ギララニウムを手にした第八航空部隊では、ギララニウムをジェット機に搭載した対圧戦闘隊が発進していた。

佐野が倒れていた宮本を助け起こすと、そこにリーザと道子も駆け付けて来て、二人の怪我の手当てをしようとするが、道子が佐野に抱きついたのを見たリーザは落ち込む。

宮本が航空隊の到着を待ちわびていると、そこに戦闘隊が飛来して来て、ギララにギララニウムを発車する。

次々にギララの身体に当ったギララニウムは、白いカビのように、ギララの身体を覆いはじめる。

最初は思ったほど効果がないように見えたので心配する加藤博士だったが、バーマン博士はこれからですと答え、それを証明するように、全身白い胞子に包まれたギララの動きは明らかに鈍り、やがて、形も縮み始める。

その小さくなった胞子状の物体に近づいたリーザは、思わず手でそれを掴もうとするので、後ろから付いて来た加藤博士が注意し、我に帰ったリーザは、器具を使って、光る卵状のものを採取する。

その卵状のものを見ながら、ギララは地球上では破壊できないと言うリーザの言葉を聞いた加藤博士は、元のう中に戻そうと提案し、バーマン博士も賛成する。

やがて、ギララの卵を乗せたロケットが基地を発車する。

その頃、リーザは、佐野との恋に破れた心を癒すために、一人崖の所に来ていた。

そこに近づいて来たバーマン博士は、彼女の気持ちを知っていたためか、佐野に本当の君の気持ちを伝えたのかと聞いた後、愛には勇気が必要なのだよと慰める。

それを聞いたリーザは、それをギララが教えてくれたわ。だって。でも佐野は別の人を愛しているんですもの…と呟き、バーマン博士と共に基地に戻って行く。

その頃、佐野と道子は一緒に近くを歩いていた。

ギララはどこに行くのかしら?と道子が聞くと、何億光年も宇宙を走り続ける事になるだろうと答える。

道子はさらに何かを言いたそうだったが、結局何も言わず、そのまま佐野と手を取り合って散歩を続けるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

怪獣ブームの最中、松竹が作った唯一の怪獣映画。

この作品、例えば冒頭の、何やら「ニトログリセリン」を連想させるような、ショックに弱い不安定な原子燃料XTU249運搬部分に代表されるように、随所に「サスペンス要素」が埋め込まれている。

何故、そのような不安定な物質がロケット燃料として実用化されているのかと言うようなツッコミなどは取りあえず横に置いておくとして、この映画では、それらのサスペンス要素をことごとく生かす事なく、全編、全くハラハラドキドキのかけらもない凡作になっている所がすごい。

原子燃料XTU249は、その後も何度か画面に登場する。

例えば、月面基地にいた道子が、UFOに吸引され燃料不足に陥ったアストロボート「AABガンマー号」にこの燃料を運んで行っているし、ラスト近くの見せ場として、佐野がこの燃料をジープの後ろに積み、ギララを誘導しようとするシーンもある。

ところが、これらのシーンでは、この燃料がショックに弱い危険な物質である事など、全く忘れ去られたかのように淡々と描かれている。

「原子燃料XTU249はショックに弱い」などと言う思わせぶりな描写は、全くその後に繋がる伏線ではなかったのだ。

あまつさえ、ラストのギララとのチェイスシーンでは、放射線を外部に露出しながら走っているので、当然、容器の側にいる佐野や宮本は被爆しており、その後死亡している危険性があるはずなのだが、そう言う事(科学考証としても、サスペンス要素としても)も全く無視されている。

他にも例えば、月基地から、急遽、病気になった塩田の代わりに、火星行きを命じられるドクター・スタインの神経衰弱振りなども、普通に考えれば、物語後半まで色々使えるサスペンス要素のはずなのだが、アストロボートの中で一回暴れた以降は、全くおとなしい普通の人物になっており、後半は全く登場さえしなくなる。

つまりそうしたアイデアは、物語全体の構成上必然性があって生まれたものではなく、単にその場その場で、ちょっとハラハラさせてみようか…と言う程度の「思い付き」で生まれたとしか思えないのだ。

何の伏線もなく唐突に見える塩田の急病にしても、アイデア次第で、いくらでも話を膨らませられそうなのに、あっさり、月基地へ寄り道するための動機付けで終わってしまっている。

そもそも、当時、松竹の若手二枚目だった園井啓介が、佐野と道子、リーザの恋の三角関係に、全く絡んでいないと言うのも奇妙である。

子供向けだからと言うなら、そもそも、男女の三角関係などと言う中途半端な大人向け設定自体が必要ないのである。

大人が観ていても、何らこの三角関係は、ドラマ的に興味を惹くようなものではないのだから。

こうしたアイデアの「薄っぺらさ」の原因は、普通に考えれば「無理矢理、急いで作らされたため」であろう。

取りあえず、大急ぎで人を集めて出し合ったアイデアを十分練り上げる暇もなく、取りあえず繋いだだけで撮ってしまったものと考えられる。

ブームに便乗して、子供にも大人にも、男にも女にも、さらには海外でも売れるようにと八方美人的に要素を増やして行った結果、何とも終始の付かない中途半端なドラマになってしまったと言うのが正解だろう。

こうしたサスペンス感の欠如は、怪獣ギララが登場して以降も全く同じ調子で、ギララの破壊劇とは全く無関係のように、防衛隊の作戦本部とかFAFC本部では、淡々とした説明芝居が進行しているだけ。

普通に考えれば、こうした大惨事を引き起こす危険物質を宇宙から持ち帰ったFAFCがマスコミから責められたり、宇宙から持ち込んでしまったスタッフたちが苦悩したりするなどと言う、緊迫した人間ドラマなどがあってしかるべきなのだが、この映画では全くそう言う事もなく、最後まで誰を責めるでもなく、反省するでもなく、みんな人事のように淡々としているだけ。

そうした人間世界のリアクションが希薄だから、ギララの起こすスペクタクルも何の緊迫感もない。

特撮の未熟さも相まって、どんなに戦車が燃えようが、ジェット機が爆破しようが、全てどこか遠い世界の出来事と言った感じ。

封切時の試写会で観て以降、この作品は何度か観返しているが、何度観ても「凡作」であると言う印象が変らない所が逆にすごいと言うしかない。

全くSF世界に馴染まない「市井のガンコ親父キャラ」と言うしかない浜田虎彦の月世界での登場なども、特に物語上、重要な人物でもない事もあり、何度観ても違和感を感じるだけである。

ただ今回いくつか発見があり、ギララの腕や足に付いているフリルのようなひれは、ゴジラの背びれのように蒼く発光すると言う事や、防衛軍が「メーサー車」風のレーザー攻撃砲で攻撃している事などを知った。

過去名画座で観た際カットされていた、ラストの倍賞千恵子の歌声などは、ミスマッチ感と言う以前に、すっかり忘れていただけに、久々に聞けてちょっぴり感激したくらいであった。

若き日の原田糸子や藤岡弘、の姿も、何度観ても貴重で初々しい。