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修羅雪姫 怨み恋歌

藤田敏八監督、梶芽衣子主演による「修羅雪姫」(1973)の続編で、監督、主演は同じ。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

舞台は明治38年、日露戦争の勝利に日本中が沸き立っていた時代。
(おそらく両親の)墓参りをしている修羅雪こと、鹿島雪(梶芽衣子)がいきなり4、5人のヤクザ風の男達に襲撃される。
雪はいつも持ち歩いている番傘に手をかけると、すばやくその柄を抜く。仕込み刀である(女性版座頭市&緋牡丹お竜のイメージか?)

物憂い…というか、人生に疲れたような目つきで、雪はやくざを全員切り殺していく。
最後のやくざが池に落ちて、真っ赤な血色が池に広がるのですが、雪はその池の水でのどをうるおす。
さらに、いつも付けねらう警官たちに囲まれた雪は、これも一人づつ切り殺していき、馬を奪うと、さっとそれにまたがり、その場を逃走するのだった。

とある海辺で、獣を生け捕る「とらばさみ」にうっかり足を挟まれた雪、見知らぬ男(原田芳雄)に助けられ、一夜を野宿で明かすのだが、翌日、またまた大勢の警官隊に囲まれてしまう。
ここでようやくタイトル。
雪は観念し、仕込み刀を空に投げます。斜めのアングルで映し出された波打ち際に突き刺さる刀…。

大雪が降った夜、女囚房で生まれた天涯孤独な雪は、その後の人生を「殺人請負人(必殺仕事人?)」として生きてきたため、裁判で死刑を宣告される。

処刑場へ運ばれる雪の馬車が、突然、謎のお多福面軍団に襲撃され、そのまま、謎の屋敷へ…。
そこで出会った、眉を塗りつぶした骸骨…というか、吸血鬼のように無気味な男(岸田森)から、雪は反政府主義者、徳永亂水(伊丹十三)の家から、ある文書を盗みだすよう命令され、仕方なく亂水の家にお手伝いとして入り込む。

しかし、雪の正体を見抜いた亂水から、吸血鬼のような男の正体が、実は秘密警察の長官、菊井誠志郎であり、彼が政治家と組んでこれまで行なってきた悪行三昧を聞かせれた雪は、亂水側に寝返るのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

時代設定、キャラクターの面白さ、ストーリー展開のうまさ、複雑な人間ドラマ、とにかく、劇画的な魅力が満載!(エロ・グロ・ナンセンス&アクション要素がうまく盛り込まれている)
これは隠れた名作だろう。
何故、これがその後シリーズ化されなかったのか不思議なくらい。(要するに、この時代にはもう、日本映画に大衆の興味がなくなっていた…という事だろう)
リメイクした一瀬氏は、良くこんな素材を見つけたものだ…と感心する。

敵役を演じる岸田森は、この前年に「呪いの館・血を吸う眼」、同年「血を吸う薔薇」で吸血鬼を演じているので、本作の菊井役はこれを意識しての役作りではないかと思われる。(ラストも壮絶!)

菊井の召し使いというか、ボディガード役で、チロルハットにマント姿、口もきけず、痛みも感じないらしい、カジモドのような風貌の怪人を、先頃亡くなった南原宏治が演じている。これも凄い!

貧民窟などのセット&エキストラはきちんと作られており、同様のイメージをそのまま今再現しようとすると、おそらく5〜10億は軽くかかるだろう。1億ちょっとの低予算で作られた釈由美子版と、単純に比較するつもりもないが、SF仕立てで作られた近作よりも、オリジナル版の方が、奇想天外なアイデアに溢れているのは確か。

当時、20代半ばくらいで眼光鋭い梶芽衣子、警官に徹底的に拷問される伊丹十三(「スウィートホーム」ばりのメイク!)、その妻あやを演じる吉行和子、残忍な刑事役に山本麟一、そして貧民窟の赤ひげ(?)みたいな原田芳雄…、とにかく役者が全員濃い!

菊井の徹底的な悪役振りが描かれるため、ラストの修羅雪の登場は拍手ものである!