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スターウォ−ズ

映画大学を優秀な成績で卒業し、「アメリカン・グラフィティ」(’73)で、大ヒットを飛ばした若きエリート、ジョ−ジ・ルーカスは、子供時代に好きだったコミック「フラッシュ・ゴードン」を、何とか映画化できないかと考えていたが、著作権問題をクリアできず、結局、自分なりのオリジナルSF作品を書く事になる。
それが、「スター・ウォーズ」であった。
幾つかの映画会社に断わられた後、20世紀フォックスの社長であった、アラン・ラッド・ジュニアに実績と将来性を認められ、企画は動きだす事になる。
しかし、革新的な特殊効果を必要とするため、「2001年 宇宙の旅」でお馴染みの、ダグラス・トランブルに紹介された、若きジョン・ダイクストラを中心とする「I.L.M.」は、コンピューター制御でキャメラの動きを、自在に操作できる「モーション・コントロール」を実現させるための実験を始めるが、なかなか、うまく行かず、業を煮やした会社側は、作品に有名俳優を使って、成功を絶対のものにするように、ルーカスに迫った。
こうして、アレック・ギネスとピ−タ−・カッシングをメンバーに加えた映画は紆余曲折の末、完成し、あまり期待もされずに公開される事になる。
おりしも、当時のハリウッドは、スタジオシステムが崩壊しかかっており、大衆は昔のような豪華で、理屈抜きに楽しめる娯楽作品を渇望していた背景もあり、「SW」は空前の大ブレイクを遂げる。
時代がこの作品を、映画史に残る、国民的ヒット作に持ち上げた、と言うしかない。
今観ると、合成の不味さや、着ぐるみのちゃちさなど、結構、「アラ」も目立つ作品だが、当時としては、正に驚異の革新的映像というしかなく、日本の特撮関係者の中でも、この作品の「本当の革新性」に当時気付いていた人は、ほとんどいなかったものと思われる。
日本の時代劇、西部劇、中世騎士物語、海賊映画、タ−ザン映画、戦争映画など、ありとあらゆる、古典的な娯楽作品の要素を含み、血沸き肉踊る、大冒険活劇にしたてたスペクタクル大作は、それまで、一部マニアだけのジャンルでしかなかったSFファンタジーを、広く一般層にまで普及せしめる事にもなった。
ただし、本国の熱狂的なヒットに比べ、公開を丸1年も遅らせた我が国では、長過ぎたプロモーション作戦の逆効果などもあり、期待されたほどの成績を残すには至らなかったのも、また事実であった。
2台のロボットコンビが「隠し砦の三悪人」をヒントにしているなどの情報から、それまで、名前だけの存在になりかけていた、巨匠、黒澤明が、一躍、国内でも脚光を浴びるきっかけにもなったのは、有名な話である。
「ID4」などの後年のSF映画が、明らかに、この作品の「ドッグファイトシ−ン」を、まねているのも明らかだろう。