1976年、ゴジこと、長谷川和彦監督デビュー作。
製作には今村昌平が名を列ねる。
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斉木順（水谷豊）は、アイスキャンデー売りから始まり、今や車の修理工として、母親（市原悦子）と共に地道な生活を続けている父親（内田良平）から、一軒のスナックを任されている青年だったが、そこの従業員として雇った娘、ケイ子（原田美枝子）と深い仲になっていく。
ある日、久しぶりに帰った実家で、その事を父親から叱責され、ケイ子の暗い過去にまで触れられた順は逆上し、思わず父親を包丁で滅多刺しにして殺害してしまう。
それを、帰宅してきた母親が発見、最初は狼狽する彼女だったが、その内、一緒に死体を始末し、二人で逃げようと順をさとす。世間の眼を気にし、息子を溺愛する母親像がリアルであると同時に不気味である。
しかし、時が経つにつれ母親の心理は段々不安定になっていき、ついには順を殺害しようと包丁を振り上げる事に…。
小さな家の中で繰り広げられる血なまぐさい親子喧嘩。
シーツに包まれた状態で、順に「痛くないように殺して…」と甘える母親。
実際に刺されると「痛いよ〜！」と悲鳴をあげる母親。
「これでもう…、働かなくていいんだ…」と事切れる母親。
前半部は、とにかくこの水谷豊と市原悦子の体当たり演技が素晴らしい。
もみあげが濃い、内田良平の死体の存在感も秀逸。
後半は、スナックに戻った順が、まとわり付いてくるケイ子から心理的に逃げようとあがく姿が描かれていく。
しかし、同様に心理的に孤独な境遇にあるケイ子は執拗に順にすがりついてくるし、死体を海に投棄した後、自棄になって路上検問中の機動隊員に殺人を告白しても、相手にはされない順。
過去の幻影が錯綜する中、順はとうとう、スナックを焼き、自らもその中で死のうと決意する…。
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ATG映画特有の、低予算、エロス、暗い青春が特徴的な作品。
ロンゲ姿が初々しいチイチイ（地井武男）や、デビュー当時から変わらぬ演技、桃井かおりなどの懐かしい役者陣に、ゴダイゴの軽やかな音楽、さらに原田美枝子がはいているヒラヒラのミニスカートが、時代を強烈に感じさせる。
70年代を象徴する作品の一本だろう。
