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女吸血鬼

1959年新東宝、中川信夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある夜、富豪、松村茂勝の娘、逸子(池内淳子)の誕生日パーティに向かっていた婚約者で東洋タイムスの記者、大木民夫(和田桂之助)は、急がせていたタクシーの前に突然フラフラと歩み寄り、轢かれた…と思ったものの、こつ然と姿を消した謎の女を不思議に思いながらも、屋敷に到着します。
その庭先でも、先ほど消えた女の姿が…。

その松村家では、20年前に失踪した茂勝の妻で、逸子の母親、美和子(三原葉子)が元の若い姿のまま、長年、開かずの部屋になっていた自室のベッドに昏睡状態で出現。家中大騒ぎになります。
彼女こそ、先ほど来、民夫が見かけていた謎の美女だったのです。

後日、上野のニ期会という美術展に、祖父江四郎と名乗る謎の画家の出品作を観に出かけた民夫と逸子は、そこで、昏睡状態の母親そっくりの裸婦画と、サングラス姿の怪しい男(天知茂)に遭遇します。

そのサングラス姿の男は、宿泊中のホテル内で月光を浴びると突如苦しみだし、吸血鬼に変身したかと思うと、心配して近付いてきた女給を襲うのでした。

やがて、美術館から盗み出された問題の裸婦画が、何故か松村家に届けられます。
一方、眠っていた美和子が目を醒まし、20年間の不思議な過去を告白しだすのでした…。

それによると…、

島原の乱の頃(戦闘シーンや、城郭の爆破特撮シーンがあります。他の作品からの流用か?)、
如月城の勝姫(三原葉子、二役)に使えていた家臣、竹中信孝(天知茂、二役)は、恋焦がれた勝姫の瀕死の身体から生き血を吸い、永遠の命を得ます。

その後も、死んだ勝姫への未練を断ち切れず、吸血鬼と化して、似た面影を持つ乙女を襲い続けて生き長らえていました。

現在では、画家になっていた竹中は、ある日偶然、島原に夫と共に遊びに訪れていた、天草四郎の血を引く末裔、美和子に「勝姫」の姿をダブらせ、魔力で眠らせた後、島原の地底にある如月城に連れ込むのでした。

そこには、白髪の老婆、小悪魔のように小さな男、スキンヘッドの半裸男の3人の魔物(?)が、吸血鬼、竹中と共に住んでいたのです…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼


橘外男の「地底の美肉」を原作とした、怪奇ファンタジーとでもいうべき作品。

吸血鬼ものは吸血鬼ものなのですが、「島原の乱」や天草四郎といった「和風テイスト」が加わった「奇妙な味わい」の作風になっています。(ちょっと、江戸川乱歩風の要素も…)

池内淳子は、よほど注意して観ないと分からない程、華のない「普通の娘さん」ですね。
圧巻は、何といっても、ニヒルな男、天知茂の吸血鬼でしょう。(この当時はまだ、晩年有名だった、あの眉間のシワもありません)

美和子が劇中、「地底の殿様」などと呼んでいますが、別にちょんまげなどは付けていませんし…。
回想シーンでは、天草四郎風(「魔界転生」でのジュリ−スタイルですね)の衣装ですが、現在ではオールバックのダンディーな洋装男で、地底の如月城も、何故か洋風の作り…。
美術的には、全編、ほぼ洋風趣味に統一されています。

今観ると、別に恐くも興奮もしませんが、当時としては、これで、十分にエロティックで衝撃的な内容だったのかも知れません。

でも、タイトルの「女吸血鬼」というのが、どう考えても、ちょっと意味不明…?