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王立宇宙軍
オネアミスの翼

1987年、BANDAI、山賀博之原案+脚本+監督作品。

劇場用アニメが空前のブームを呼び、宮崎駿などの作家名も大衆に少しづつ浸透し始めた頃、当時アマチュアグループなどの若手アニメーター等を集め、バンダイが製作した意欲溢れるアニメ作品。
音楽監督に坂本龍一を起用するなど、数々の野心的な試みは、成功している部分もあれば、力足らずに終わっている部分もあり、商業作品としては、残念ながら失敗作と言うしかない。
独特の世界観や、ち密なメカ表現など、若手スタッフの才能が全快した良さも目立つが、キャラクターデザインのクセの強さや、基本設定の現実感の希薄さなど、一般人には馴染み難い面も多く、現在、ほとんどこの作品が忘れられた存在になっているのは、仕方ないとも思える。
特に目立つのが脚本の不味さで、青春期特有の漠然とした希望や不安などが、色々、思い込みの強いテ−マ性も交え表現されてはいるのだが、結局、どれも整理されないまま、緊張感のない物語に紛れ込んでしまい、観客側には最後まで、手ごたえのある「核」のような物が伝わって来ないのが惜しまれる。
「青春」を描こうとしても、青春のただ中にいる者には、かえって表現し難いテーマなのだと言う事を、改めて考えさせられる作品でもある。
最近では、一部で過剰に高く評価されている部分もあるが、それは、この作品にとっては、逆に不幸な事だとも感じる。
カルト作品として、一度は観ておいて損はないかも知れないが…。