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映画評index

忍者武芸帖

1967年、創造社、白戸三平原作、佐々木守脚本、大島渚脚本+監督作品。

私が、今まで、お金を払って観てきた映画の中で、こんなにびっくりした作品はない。
何しろ、印刷された白戸三平の劇画を、「そのまんま」コマの進行通りに、キャメラが写していくだけの内容。
つまり、読者が、目で劇画本を読んでいる感覚がそのまま、スクリーン上に再現されるだけの趣向(?)なのだが、原作をすでに読んでいる者にとっては、「何?これ?」という、騙されたような感情を持つのも確か。
当然、吹き出しなども、そのまんま画面にも出ているのに加え、役者陣の声や擬音が重なる不思議さもある。
映画本などには、静止画を使ったモンタージュ技法などと、もっともらしい事が書いてあるが、要するに、コンセプトだけに頼った実験作…と捕らえるのが正しい所だろう。
こんな作品も、当時の映画青年達は、熱く支持していたのだから、今となっては笑うしかない。
白戸の劇画自体は、漫画史に残る傑作ではあるのだが…。