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雲の上団五郎一座

1962年、宝塚映画、青柳信雄監督作品。

舞台劇として大ヒットした、菊田一夫原作作品の映画化。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

どさ回りをしている「雲の上団五郎一座」の芝居はひどいもの。
今日も、座長の団五郎(榎本健一)はじめ、全員いい加減な芝居の連続で舞台はメチャメチャ。

一座の女形、のり蔵(三木のり平)と、太蔵(八波むと志)両方に言い寄った尻軽女、実は、地元の顔役、辰五郎(藤木悠)の情婦だったので、上演途中にもかかわらず、女を巡って舞台裏では大騒ぎ。
墓場までやくざと二人の追っかけっこは続き、結局、のり蔵と太蔵はそのままどこかへ遁走してしまう。

メンバーの欠けた一座、遠い昔のつてを頼って、四国へ向かう事に。
その船上で、一人の口のうまい青年と出会う。
熱く演劇を語るその青年、東京で演出家をやっている酒井(フランキー堺)というらしい。

ライバル会社が招いた女剣劇に客を奪われ悩んでいた、四国の興行主、萬玄之助(花菱アチャコ)の一人娘、春美(水谷良重)が、酒井とは旧知の仲であったからさぁ大変!
二人は口裏を合わせて、この団五郎一座を酒井共々父親に雇わせてしまう。

現地で出会った貧しい旅役者、由利徹、南利明、佐山俊二らも加え、いよいよ、団五郎一座の芝居稽古が始まる。
酒井が用意した脚本は、何と西部劇!
しかし、そのあまりのメチャメチャぶりに、萬社長は軽い脳硬塞を起こしてしまい、寝たきり状態に。

それでも、皮肉な事に、芝居は大当たり、爆笑に次ぐ爆笑で、今度は女剣劇の方が閑古鳥が鳴く始末。
お色気作戦で、団五郎一座の切り崩しを計ろうとした女剣劇一団だったが、これもあえなく失敗。

そうこうしている内に、大坂の京阪神宝興行社長、柳沢(高島忠雄)が視察に訪れ、団五郎一座と契約を結ぶ事になる。
余りの驚きで、萬社長の病気も直ってしまう。

かくして、団五郎一座は、晴の大舞台を踏む事に。
のり蔵や太蔵も戻って来るし、連日連夜の大入りに、団五郎座長は大満足!
ただし、自分達は大真面目でやっていたつもりの芝居が、いつの間にか「爆笑もの」と解釈されていた事に対する不満を除けば…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

浅草を中心とした軽演劇を「アチャラカ」と呼ぶそうなのだが、本作は、劇中劇の形を借りて、そのアチャラカの魅力をある程度知るにはうってつけの作りになっている。

「ある程度…」と書いたのは、映画で描くアチャラカには限界があると思われるからだ。
あくまでも、軽演劇の本当の魅力は舞台。
しかも、本作に登場する、脱線トリオ(由利徹、南利明、八波むと志-後に佐山俊二が参加)の面々の芸なども、実際は、もっと下品さが売り物もので、映画では表現できない部分も多い。
当時、すでに全盛期を過ぎ、見せ場が少ないエノケンや、森川信などのおもしろさも、今一つ表現されていないのが寂しい気もするが、それを補ってあまりある活躍をするのがフランキー堺である。

茶川一郎、藤田まことなど、当時売り出し中だった若手が登場するのも嬉しい。

当時の、浅草、大阪、映画界のお笑いスター総出演作品として気楽に楽しむのが、一番素直な見方であろう。