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BRUCE LEE in G.O.D 死亡遊戯

「アチョ〜!!」
かつて、ヌンチャクを振り回し、何度か頭にコブを作った経験のある人間ならば、再び、身体が熱くなる事請け合いの作品だ。
もはや、ブルース・リ−の未公開フイルムなどほとんど残ってないはず…と、半信半疑の気持ちで観始めたのだが、タイトルバックで、いきなり、リ−の懐かしい顔が登場した瞬間から、気持ちはいきなり作品に吸い込まれてしまう。
アクションシ−ンのほとんどが撮影済みと、かねてから噂のあった「死亡的遊戯」のフイルムが、作品の中心となっているのだが、新しいリ−役の主人公を使って作られた「青春ドラマ」のような再現フイルムと、当時の関係者たちの証言などに、随時、断片的な本物のフイルムがモンタージュされるような作りになっている。
一介のローカル業界に過ぎなかった、当時の香港映画を、何とか、ハリウッドに対抗できるようにしたいと願うリ−は、一本の作品の構想を固め始める。
そのタイトルは、何故か縁起が悪いとされている「死亡」を冠した物だった…。
さらっとしたドラマは、決してあざとくなく、あまりリ−に似ていない主人公にも、素直に感情移入できるのは、私たちが、当時のリ−の情報をかなり知っていて、そう嘘臭くない話だな、と感じる事もあるだろうが、編集もうまく処理しているからだと思える。
だんだん、「燃えよ!ドラゴン」撮影を間近に控えたリ−の現実と、彼の心理を象徴するかのような、謎めいた新作の構想が、本物のフイルムとダブルように重なって行き、やがて、観客は、「死亡的遊戯」の塔の中に自分が立ち会っている事に気付く。
そこは、息詰まるような「戦いの場」であった。
ダン・イノセントスとのヌンチャク合戦、怪物ジャバールとの死闘、かつて、ロバ−ト・クロ−ズ版の「死亡遊戯」で、観知っているシーンもあるが、何か迫力が違う。汗の匂いまで届きそうな緊張感に溢れているのだ。
ある事情から、切り取られていた部分が、おそらく全て編集され、リ−が当初考えていた画面に近いシーンが再現されているからだろう。
噂の「死亡的遊戯」の、ほぼ全貌が今、ベールを脱いだのだ!
おそらく、リ−亡き後、幾つも作られた「リ−映画」の中でも、傑出した一本だと思う。
それは、作った人たちに「リ−に対する愛」が、感じられるからだと思える。
これは、決して「キワモノ映画」ではない。
ブル−ス・リーの魂に、再び立ち会える、貴重な作品である。