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野獣の青春

1963年日活映画「野獣の青春」
原作、大薮春彦「人狩り」、監督、鈴木清順!

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

まず、白黒の墨文字でタイトル、「の」の字だけが深紅。

冒頭、室内で重なっている男女の死体を調べる刑事達。
死んでいる男の身元が刑事であった事が、発見された警察手帳のアップで分かります。

この部分、白黒画面なのですが、現場のテーブル上に置かれた花瓶にささった一輪の赤い花だけが「パートカラー」で描かれます。

キャスト紹介部分は、白黒の映像にブルーグレ−の文字。
そしていきなり、本編は鮮やかなカラー画面で始まります!(まさに清順美学!)

町で喧嘩しながら、キャバレーに乗り込んできた流れ者、水野譲二、通称ジョ−(宍戸錠)。

マジックミラーでキャバレーの様子が丸見えの部屋に連れ込まれ、町を束ねる野元興行の子分達に拷問されかけますが、逆に銃を奪ったジョ−は、たちまち子分達を叩きのめし、組で働きたいと親分風の男(金子信雄、まだ髪の毛あり)に申し出ます。
この間、マジックミラー越しの向こう側のキャバレーでは派手な羽飾りを付けた裸の女が無音(防音装置があるため)で踊っています。

しかし、酒浸りの金子信雄は組の専務にすぎず、本当の社長の屋敷にジョ−は連れていかれます。

この社長、野元がすごい!

黒ブチ眼鏡をかけ、ペルシャ猫を抱いている(ブロフェルド?)一見真面目そうな紳士なのですが、実は投げナイフの名手で、しかも女を鞭で殴っていく内に興奮する…という典型的なサディスト。

この強烈な悪役を演じているのが意外や意外!「おやっさん」事、小林昭二さん。
「ウルトラマン」や「仮面ライダー」で一躍有名になる前の作品ですね。
当時、30代前半くらいでしょうが、もう社長役が似合う風格があります。(デビューは、吉永小百合さん主演の「キューポラのある街」だったようです。この作品はそれに次ぐ2本目の出演作)

野元の取り巻きには、片腕の男、銃器類に目がない気の良い男、母親の悪口をいわれると、相手の顔を剃刀で切り裂く一見ゲイ風の美少年「すだれの秀」(川地民夫)など、いずれ劣らぬ一癖も二癖もありそうな連中ばかりが揃っています。

無事に野元組に入り込んだジョ−は、一方で、組のライバル組織「三光組」にも近づき、そちらの親分にも取り入ります。
こちらの事務所は、映画館のスクリーンの裏側!
白黒映画が映し出されているスクリーンの前で、サスペンスフルな駆け引きが行われていきます。

こちらの組には、飛行機モデルマニア、武智(郷英二)がいて、最初は警戒していたジョ−に次第に惚れ込んでいきます(この人、確か宍戸錠さんの実弟で、ちあきなおみさんの御主人だった方ですけど、すでに故人ですよね。「英」の字は金偏が本当なんですけど、変換文字にありませんので悪しからず)。

話の基本は黒澤の「用心棒」みたいな感じですけど、それに、最初の刑事殺しの犯人捜しと、大掛かりなコールガール組織の元締捜しの要素が加わっていて、かなり複雑な展開になっています。

三光組の親分が、ダイナマイトを積んだ車で、野元の家に突っ込むシーン。
ミニチュア撮影なのですが、何だか似たようなシーンを以前観た覚えが…。
北野監督の「ソナチネ」(1993)だったかな〜?

ラストの意外な真犯人像と、それに対して行うジョ−の仕打ち…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
ハードボイルドって、邦画では、この時代が一つのピークだったのかも知れません。