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太陽にかける橋
ペーパー・タイガー

足の悪いイギリス人、デビッド・ニーブンが、政情不安定な東南アジアにある某国の日本大使に招かれ、その息子の家庭教師に任命される所から、物語は始まる。
ニ−ブンは、好奇心旺盛な日本人少年に、自分が軍隊時代に成し遂げた、数々の冒険譚を語って聞かせるのだが、やがて二人は、その国の大統領と対立している反乱軍組織のメンバーに誘拐されてしまう。
実は、ニーブンの正体は一介のペテン師に過ぎず、誘拐後、その事が周囲にばれてしまう…という所からが、本編のクライマックスになっていくのだ。
タイトルの「ペーパー・タイガー」というのは、おそらく「張り子の虎」を表しており、それは本作におけるデビッド・ニ−ブンの役所そのものである。
「嘘で固められた英雄」が、実際のピンチに陥った時、どう行動するのか…。
少年は、うすうすその正体に気付きながらも、尊敬する先生としてニ−ブンを励ましながら、隠れ家から脱出しようと試みる。
やがて、その姿に打たれたニ−ブンは「本物の英雄」たらんと行動を起こすのだが…。
イギリス人好みの「異境冒険譚」だが、一見、気が弱そうなニ−ブンの個性をうまく生かした設定だと思う。
本作での、もう一つの見所は、日本大使に扮しているのが、われらが「三船敏郎」である事だ。
威厳があり、誠実な人間ながら、息子の誘拐に苦もんする普通の親としての姿を良く表現している。(同じ、誘拐ものとして黒澤の「天国と地獄」を連想させたりするが…)
イギリス映画ながら、それほど「日本人像」が奇妙に描かれていないのも、三船の存在に負う所が大きいのではないか。
架空の国とはいえ、東南アジアの描き方が安手になってしまっている点や、反乱軍の兵士たちの描写が中途半端な点(彼らの言い分にも、それなりの正当性が感じられただけに、ラスト「単なる悪役」のような殺され方には不満が残る)など、作品として今一つ…の観は否めないが、ニ−ブン&三船共演の異色作として、一見の価値はあると思う。
日本人少年は好演だし、観終わっての後味は、決して悪くない。