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二十四の瞳

壺井栄原作、木下恵介監督の1954年度、松竹作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼


時代は戦前、瀬戸内海に浮かぶ小豆島が舞台。
島の子供達は、島にある分校に4年生まで通い、5年になると本土の学校に船で通うようになります。
そんな岬の分校に新学期が近付きます。
着物と袴姿の前任者、小林先生が転任するのを子供達(全員着物姿)が見送りながら、新しいおんな先生の噂をしています。
そこへ、自転車に乗った洋服姿の若い女性が「おはよう!」と周囲に声をかけながらさっそうと登場します。
挨拶された子供達も、大人達もびっくり!
当時、洋服を着て、自転車に乗っている女性など島にはいなかったからです。
それが、新任の大石先生(高峰秀子)でした。
彼女は12人の新一年生を受け持つ事になります。
熱心に唱歌を教えてくれる大石先生は、急速に子供達には親しまれるようになっていきますが、貯金にしか興味がない同僚のおとこ先生(笠智衆)や保守的な親達(清川虹子ら)からは、ちょっと敬遠される存在になります。
2学期になったある日、浜辺で男の子に呼ばれた大石先生は、子供達が仕掛けた落とし穴に落ちて、足の腱を切ってしまいます。当然、学校へは来られなくなりました。
そんな先生を恋しがって、12人の子供達は歩いて先生の実家まで会いに行こうと相談をします。
延々と歩いている内に、お腹が空き泣き出す子、他の子達もなかなか目的地に行き着かないので不安になり泣き出します。
一方、子供達がいなくなった親達は大騒ぎ!(またまた、トトロの世界)
そんな子供達は、自分達を追いこしていった一台のボンネットバスに大石先生が乗っているのに気付き、全員泣きながらバスを追い掛けます。それに気付いた大石先生はバスを止め、子供達を全員バスに乗せて自宅に戻り、きつねうどんをふるまうのでした。そして、全員浜辺で一緒に記念写真を撮ります。(この写真が、後半の重要なアイテムになります)
それから5年が過ぎ、子供達は6年生に…。
今日は大石先生がお婿さんをもらうというので、本土に通うようになったかつての教え子達が島に様子を見にきています。
船から降り立った羽織袴姿のお婿さんは、ひときわ長身の若者。
男の子の一人は「うん、あれなら大丈夫!」と、青年を認めます。
観光船の船長であるその青年、演ずるは天本英世です。(おそらく、これがデビュー作)
修学旅行で大石先生と子供達が乗っている船が、夫、天本の乗る観光船とすれ違うシーンなど、互いに手を振り合い、観光船に乗っているブラスバンドが軽やかに音楽を奏で、爽やかな名シーンになっています。
しかし、この作品がきれいごとのファンタジーのように見えるのはその辺りまで。
戦争に向かう暗い世相と、当時の貧困、女性の身分の低さなどが12人の子供達と大石先生自身にも徐々に重くのしかかっていきます。
この辺から、観ていて涙が止まらなくなります。
厳しい現実と教育現場に絶望し、一旦は教師を辞める事になる大石先生でしたが、残酷な運命は、戦後、再び、島の分校に彼女を戻します。
同窓会に集まったかつての教え子たち(すでに12人全員は揃わない)が、先生にプレゼントしたものは…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
観終わって、しばらく立ち上がれないぐらい胸を打たれる名品でした。