TOP

映画評index

サイドバー

H.G.ウェルズの
S.F.月世界探険

SF雑誌などで作品の存在自体は知っていたが、今回のテレビ放映(テレビ東京)で、始めて観る事が出来た古典作品。
月に初到達した(!)イギリスの宇宙船クルーは、月面で、古びたユニオンジャックの旗と書き置きを見つける。
すでに何十年も前に、この地に訪れたイギリス人がいたのだ!
残された書き置きのサインを手がかりに、ある老人を訪れた政府関係者たちは、彼が語り始める驚異の物語に耳を傾ける事になる。
のどかな田園地区に住む、作家志望の貧しい主役とその恋人は、隣で不思議な実験を繰り返している老人と知り合う。
老人が実験していたのは、「引力を遮断する塗料」であった。
この辺の描写は、のんびりとした古き良き時代の牧歌風コメディとして描かれており、それなりに楽しめる。
やがて、多面体形の宇宙船に塗料を塗り、老人と恋人二人がひょんな事から、宇宙へ出発する事になる。
この辺から、なかなかしっかりした合成を使用した特撮映画らしくなり、月に到達した後、彼らが見つけた月面の地底世界は、ジュール・ヴェルヌの「地底旅行」をほうふつとさせる…のも興味深い。
そこで遭遇する「月人」は、蜂を思わせる形をしており、着ぐるみと、モデルアニメの併用で表現されているようだ。
さらに、巨大な「芋虫怪獣」や光線砲などといった、SF映画お馴染みのアイテムが続々登場し、マニアならずとも退屈する事はない展開が繰り広げられる。
ラスト近く、「月人」の首領のような存在の登場を迎えるに当たり、月に残り調査を続行したがる老博士と、脱出を計る恋人二人は、修理を終えた宇宙船を前に、別れ別れになるのだった…。
オーラスには、「宇宙戦争」を連想させるようなオチも付いていて、マニアならニヤリ…とする所だろう。
基本的には、ウェルズの原作をかなり忠実に映像化しているらしき作品で、技術的にも、当時としては堅実な水準を保っている…と言えよう。
思わぬ拾い物をしたような、得な気分にさせてくれる逸品であったと思う。