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友情

1975年松竹作品。
若き日の、中村勘九郎が主役の大学生を演じている。
夏休みのバイトで、山奥のダム工事現場に参加した勘九郎は、そこで、粗暴だが何故か憎めない労務者(渥美清)に出会う。
最初は、品のない労務者の振る舞いに抵抗を覚えていた勘九郎であったが、だんだん、彼の本質的な魅力に惹き付けられていき、とうとう、無二の親友のような関係にまでなる。
やがて夏休みが終わり、二人は別れるが、何年か後、勘九郎は、労務者の話していた、彼の故郷だという小さな島を訪ねる。
そこで、懐かしさから、島の人々に聞いた労務者に関する噂話には、意外な過去が秘められていたのだった…。
いかにも、松竹作品らしい人情話なのだが、前半部分はロケ中心で、それほどベタついた感じはなく、渥美清の野放図なキャラクターを楽しむ事ができる。
それだけだったら、「寅さん映画」と同じようなパターンに感じられるはずなのだが、この作品では、後半に、その人物の意外な過去を、間接的にさりげなく付け加える事で、世間知らずの大学生が、最後になって初めて、「人生の哀しさ」と出会う…という仕掛けになっている。
地味な話ではあるが、一見、説教臭くなりがちなテーマを、それほど嫌みなく描いており、良質の作品になり得ている…と思う。
一見の価値あり。