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竹取物語

1987年、東宝映画+フジテレビ、菊島隆三+石上三登志脚本、市川崑脚本+監督作品。

竹取物語」自体の映画化は、生前の円谷英二も実現させたがっていた素材であり、特撮黄金期の東宝が、それなりの予算を費やして作っていれば、見ごたえのある大作になっていた可能性もあっただろう。
しかし、この作品はバブル景気の余波を借って作られたような、まさしく「バブリー大作」でしかなかった。
「御人形女優(?)」沢口靖子のプロモーションを兼ねて作られたかのような薄っぺらな内容と、冗漫な演出が相俟って、とにかく「退屈そのもの」というしかない出来となっている。
何せ、動きの少ない時代設定の話だけに、よほど、脚本に工夫を凝らさないと、長時間持たないはずなのに、竹林の風景をきれいに撮っているだけ…という、この当時の市川崑氏の趣味性だけが目立った単調な展開がつらい。
お馴染みの怪獣も御愛嬌で登場するが、特に際立った出来とも言えず、本作一番の見所とも言うべき、ラストの「月からの使者降臨シーン」も、誰が観ても「未知との遭遇」のパクリ以上のものではなく、せっかくの古典を生かし切れない、スタッフたちのオリジナリティのなさ、アイデア不足が哀しい…というしかない。
こんな作品を、東京国際映画祭で招いた海外からの賓客に、恥ずかしげもなく見せた…という日本側の無神経さが、いまだに信じられないくらいである。
「バブル時代」にはこんな作品を作っていたのか…という、過去を振り返るには役立つ材料かも知れない。