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釈迦

1961年、大映京都、八尋不二脚本、三隅研次監督作品。

本郷功次郎が、恵まれた王子の地位を捨て、仏教の悟りを開く道を進む事になる釈迦の姿を演じた、特撮スペクタクルドラマ。
釈迦が鬼子母神を諭す逸話や、菩提樹の下で幻想を見るシーンなど、お馴染みのエピソードが描かれているが、何といっても、釈迦の若かりし時、彼のライバル的存在として登場する、荒くれ男、ダイバ・ダッタ(勝新太郎)の存在感が強烈で、主役を食ってしまっているのが楽しい。
後半は、悟りを開いた釈迦が、数々の奇跡を起こす様が、当時の特撮技術で描かれるのだが、ハリウッド史劇に対抗したような巨大な石像が、地震でまっぷたつに破壊されるシーンなど、特撮史に残るスペクタクルシーンには、正直驚かされる。
当時の大映の底力を見せつけられるような思いだ。
何気なく、本物の象が登場していたり、異国情緒をそれなりに描こうとする、当時のスタッフたちの意気込みが頼もしくもある。
現在の邦画では再現不可能な、表現の芳醇さがうらやましくも感じる、黄金時代を代表する一本であろう。