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孫悟空

山本嘉次郎監督、特撮、円谷英二コンビで「孫悟空」といえば、戦前の1940年にエノケンを主役に起用した同名映画があるが、これは、戦後の1959年度作品。
主役の孫悟空には、三木のり平が扮している。
徳川夢声演ずる紙芝居屋が、村の子供たちに紙芝居「孫悟空」を話して聞かせている所からシーンは始まる。
やがて、その紙芝居が人間の芝居に徐々に移り変わるような演出になっており、その後も、紙芝居風の「書き割り」の絵とセットを組み合わせた独特の絵作りが面白い。
観音様の使いという「ポンちゃん」なる女の子が登場し、狂言回しを努める趣向も目新しい。
ストーリー自体は、お馴染みのストーリーをほぼ忠実に再現しているが、猪八戒に狙われる娘役に、若き八千草薫が扮しており、悟空が彼女に化けるシーンでは、八千草自身がドタバタ演技を演じてみせたり、金角、銀角、銅角(笑)を演じる、由利徹や南利明らの懐かしい顔ぶれが楽しめる。
三木のり平の孫悟空は、やや、主役をはるには弱いか…?とも感じたが、術を使うために身体の毛を抜く度に、死ぬ程苦しむ…という設定が加わっている事で、後半の感動ドラマがうまく生きており、個人的には、今まで観た「孫悟空」では、一番良くできている作品と感じた。
円谷特撮も戦前版より洗練されており、全体的にモダンで、なかなか楽しい作品に仕上がっている。
戦前版と比較して、観てみるのも面白いのではないだろうか。