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千夜一夜物語

1969年、虫プロ作品。
漫画家、手塚治虫氏が、初の劇場用長編アニメに挑んだ野心作で、発表当時は「初の大人向けアニメ」として話題を呼んだ。
声優にも、主役アルディンに青島幸男、その他、ゲスト出演で小松左京、筒井康隆、遠藤周作など異色の顔ぶれが登場する。
技法的にも、ミニチュア撮影を併用したり、群集シーンのアニメートにも果敢に挑戦するなど、意欲的な所を見せた。
しかし、結果的に、手塚氏の「あれもやりたい、これもやりたい…」という欲張りすぎが裏目となり、アイデアの羅列に終止した感が強く、一本の作品としての完成度には不満が残る事になった。
女護ヶ島での愛欲シーンのように、アニメならではのデフォルメされた性表現など、見るべきシーンもあるのだが、ギャグも散漫な印象で、この作品以降、手塚さん主導のアニメ作品には、印刷作品ほどの冴えが見られない…という悪評が一般的になったのも事実である。
鼻と目の大きな、主役アルディンのイメージは、後年、寺沢武一さんの人気コミック「コブラ」のキャラクターに影響を与えているのではないか…といわれている。
70年代半ば、「宇宙戦艦ヤマト」の大ブレイクによる国産劇場用アニメブームを迎える前の、過渡期的な作品とも言えよう。