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世界大戦争

1961年度東宝作品。
特撮映画でありながら「芸術祭参加作品」。
東京プレスクラブに所属する記者ワトキンス(ジェリー伊藤)のお付き運転手、田村茂吉(フランキー堺)は、適齢期の娘、冴子(星由里子)と、年の離れた小さな2人の子供を持つ平凡な男だった。
神経痛に悩まされる妻(乙羽信子)と、つましい生活を築いていたが、世界を二分する、同盟国と連邦国との一発触発の冷戦状態は、そんな一介の市民の生活にも暗い影を落としていく…。
両陣営の状況は、何度か、危機的な事故で崩壊しようとするが、腎臓を患っている病身の総理大臣(山村聡)をはじめとする日本政府の必死の説得もあって、何とかそれをギリギリの所で免れていたのだったが…。
松林宗恵監督の淡々とした演出は、庶民の生活を描く部分には生きているが、両陣営の軍事基地内でのサスペンス描写には今一つメリハリを欠いているようで、今の感覚で観ると、ちょっと単調にも見える。
円谷英二の丁寧なミニチュア特撮はともかく、映画としては、戦争に突入する辺りの描写があまりに唐突で、後半の展開にやや強引さを感じてしまうのも確かだろう。
それでも、「突如訪れた理不尽な破滅状況」に右往左往する群集シーンなどのパニック描写は見事で、東京の保育園に預けた一人娘に会う為に、働き先の横浜から、逃げまどう人並みに一人逆らい走り続け、やがて倒れ落ちる貧しい母親の姿。
そして、それを待ち受ける少女を含む園児たちと保母、白川由美の健気な姿には、思わず涙を禁じ得ない。
船で旅立った恋人の高野(宝田明)と、無線で「ボクタチ シアワセダッタネ」と通信しあう着物姿の冴子や、最後の夜、一家揃ってごちそうの食卓を囲むフランキー一家の描写も印象的。
これは紛れもなく、「国産近未来破滅もの映画」の名作…といっても良い作品ではないだろうか?


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