TOP

映画評index

 

サイドバー

殺人狂時代

1967年、東宝作品。
都築道夫の「なめくじに聞いてみろ」(旧題「飢えた遺産」)が原作。
水虫持ちで分厚い眼鏡をかけた、貧しく冴えない大学講師の独身男、桔梗信治(仲代達也)は、ある日、「大日本人口調節審議会」なる肩書きの名刺を持つ、謎の男の訪問を受ける。
その日以来、彼は、何故か自分が命を狙われている事を知り、フとしたきっかけで知り合った、ミステリー雑誌記者(団令子)や自動車泥棒(砂塚秀夫)と共に、敵の正体を探るべく、変装をし反撃に乗り出すのだった。
全編、凝った画面構成や奇抜なアイデアが盛り込まれた、ブラックユーモアミステリーともいうべき、独自の世界観の作品になっている。
当時、流行っていた「007シリーズ」などの影響も感じられるが、ある時はシュールに、またある時はナンセンスに…と、岡本喜八監督のウイットセンスは冴えまくっている。
特に、桔梗を付け狙う、殺人パラノイア的変人(天本英世)の怪演が素晴らしく、ラストのスペイン式決闘などは、セット美術の様式美と相俟って、強烈な印象に残るシーンになっている。
懐かしの東宝特撮や円谷プロ系でお馴染みの役者たちが、チョイ役で顔を見せているのも嬉しい所だろう。
白黒画面の中に展開する独自の濃密なドタバタ劇は、永く記憶に残る不思議な魅力に溢れている。
岡本喜八監督の代表作の一本だと思う。