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プルガサリ 伝説の大怪獣

日本の「大魔神」を思わせる、珍しい、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)製の怪獣映画である。
圧政に苦しむ農民たちは、さらに農具まで供出せよとの命令に耐えかね、それらを隠してしまう。
そのため、投獄された鍛冶屋のタクセは、獄中で拷問を受けながらも、娘アミから差し入れられた米粒で、小さなプルガサリ人形を作る。
やがて、アミの裁縫箱に入れられたその人形が命を持ち、動き出すのだった。
このミニプルが、何とも愛らしく魅力的である。
鉄を食べるプルガサリは、少しづつ大きくなり、とうとう、民衆と共に朝廷に立ち向かうまでになる。
しかし、朝廷を倒した後も、プルガサリはは鉄を求め続け、今度は民衆からうとまれる存在になってしまう…。
特撮は、日本の東宝が協力し、プルガサリの着ぐるみの中には、平成ゴジラでお馴染みの、薩摩剣八郎氏が入っている。
前半部分はスタジオ撮影が中心で、どちらかといえば、演劇芝居を観ているような印象だが、後半は、中国ロケや、大掛かりな群集シーンも用意されており、それなりに見ごたえのある戦闘シーンが続く。
特に特撮部分は、大き目の縮尺スケールによる、ミニチュアセットの迫力が圧巻で、日本の怪獣ものからは失われつつあった「着ぐるみ特撮」の迫力を、遺憾なく堪能させられる。
ラストのリリシズムも東洋的で、日本人なら素直に感情移入出来る寓話だと思える。
デジタル技術を多用したハリウッド大作に慣れた目には、こうした素朴な作りに違和感を覚えるかも知れないが、単なる「キワモノ」以上の寓意性を含んだ内容は、観終わった後も心に残るはずだ。
珍しさだけではない、十分観るに値する作品だと思う。