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ノンちゃん雲に乗る

1955年度、芸研プロ+新東宝のファンタジー作品。
身体は弱いが、嘘が大嫌いな女の子、田代のぶ子、通称ノンちゃん(鰐淵晴子)が、泣きながら登場する冒頭部分から、すでに観ていてウルウルしてしまいます。
涙を拭い、瓢箪ヶ池に突き出した樹に登って、白鳥のまねをし始めたノンちゃんは、過って池に落っこちてしまいます。
気が付くと、ノンちゃんは雲の中のような世界におり、そこで不思議なおじいさん(徳川夢声)と出会います。
そのおじいさんに、ノンちゃんはクラスの男の子、野村長吉君のお話や、優しいお母さん(原節子)、お父さん(藤田進)、意地悪なお兄ちゃんや、愛犬エスのお話、さらに冒頭で、どうして泣いていたのか…などを上手に聞かせるのでした。
冷静に考えると、少女の「臨死体験」を描いている訳で、あまりのんきなファンタジーではないのでしょうが、ラストは涙のハッピーエンドが待っています。
まさに「トトロ」のような、心洗われるピュアな子供の世界が実写で描かれており、当時の邦画のレベルの高さを垣間見る事が出来ます。
特撮…というほどの高度な事をやっている訳ではないのですが、ノンちゃんが語る、学校の様子や家庭の様子が、しっかり誠実に描かれており、当時の純朴な日本人たちの生活や心情に心打たれてしまいます。
何より、日本人離れした美少女、鰐淵晴子の愛らしさや、詩人役で登場する、若い頃の草刈正雄にも似た大泉晃の美貌振りなどが、今観ても、お話全体をファンタジックに見せてくれます。
この作品の発表当時は、子供向けの映画として作られたのでしょうが、今となっては、むしろ、大人が観て感動するタイプの作品だと思います。
可愛らしく、純粋で健気なノンちゃんの姿を、見事に定着させたこの作品こそ、邦画が作り上げた文化的至宝の一本といわずして何と評価すべきでしょう。
名作中の名作!
必見!