TOP

映画評index

 

 

 

サイドバー

待って居た男

1942年というから、戦時中の東宝作品。
小川英雄脚本、マキノ正博監督の娯楽時代劇。
柊屋という旅篭に、色々な旅人が泊まっている。
やがて、そこの若女将を狙った小さな事件が立て続けに起きるようになる。
たまたま、骨休めに江戸から訪れていた目明かしの恋女房(山田五十鈴)や、大阪から訪れた目明かし志望のちょっと頼りなげなコンビなどが、事件を解こうと乗り出す。
しかし、事件は段々エスカレートして行き、とうとう犯人と思われていた男が殺害される事態に発展する。
そこへ乗り出してきたのが、お人よしの目明かし「飲み込みの金太」(榎本健一)。
ますます、事件は混迷の度合いを深めそうになるが、ようやく江戸の目明かし(長谷川一夫)が、重い腰を上げて、こっそり事件の解明に乗り出す事になる…。
アイデアの元ネタは外国のミステリーらしいが、とにかく、戦中の作品というのがにわかに信じられない程、全編ユーモアに溢れ、楽しいミステリーになっているのに驚かされる。
登場人物たちが、各々個性豊かに描かれており、特に、目明かしの恋女房を演じる山田五十鈴の可愛らしさが絶品!
長谷川一夫も美しく、しかも、さりげなく、でしゃばらないような活躍の仕方が、またにくいというしかない。
マキノ監督の演出は奇を衒う事もなく、全編娯楽精神たっぷりに快調!というしかない。
犯人の意外性も十分で、ミステリー作品としても見ごたえがある。
今観ても、当時の邦画のレベルの高さに驚嘆させられる事請け合いの秀作である。