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黒蜥蜴

江戸川乱歩の原作を三島由起夫が戯曲化したものの映画化、1962年度大映作品。
莫大な財産や宝石類を持つ大富豪は、愛娘を誘拐するという脅迫状を頻繁に受け取るようになり、名探偵、明智小五郎(大木実)を雇う。
大阪で、明智は緑川夫人と名乗る美貌の女性(京マチ子)を富豪から紹介されるのだが、その夜、予告通り、娘は誘拐されてしまったかに思われたのだが…。
御存じ、変装の名人、黒蜥蜴と明智の虚々実々の変装合戦が全編に繰り広げられるのだが、井上梅次監督は軽演劇風演出を狙ったのか、場面により、俳優たちに人工的な照明を当てたり、ミュージカルまがいの踊りをさせている。
そのために、サスペンスミステリーというより、ユーモアタッチの現代版おとぎ話…のような出来上がりになっているのだ。
何が本物で、何が偽物なのか…という、皮肉なテーマが最後を締める趣向なのだが、人工的な演出法が、はたしてそれを、うまく観客に伝達し得たかどうかは、にわかに判断しにくい。
映画として観るよりも、舞台芝居でも観るような感覚で接すると、面白く感じられる作品なのかも知れない。
異色のミステリー作品といえよう。