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ハワイ・マレー沖海戦

大本営海軍報道部の企画で作られた1942年度東宝映画。
国威高揚映画というイメージで観始めたのだが、実に爽やかな青春映画だったのでびっくり!
田舎の一青年が航空兵に憧れ、予科練に入り訓練を重ね、一人前のパイロットとなって、パール・ハーバー急襲に参加するまでの話になっている。
本当の予科練での訓練風景(芝居自体は若き役者たちが演じている)と、田舎でつましく生きる、青年の母親や姉妹の姿が交差して描かれ、けれん味を排した実に誠実な山本嘉次郎監督演出には、正直好感を覚えた。
登場する航空機や空母など、ほとんどの部分が実写という事もあり、全体的に嘘っぽさが少なく、クライマックスのパール・ハーバー攻撃シーンこそ、円谷英二のミニチュア撮影なのだが、編集が巧みな事もあり、当時は実写と信じて観ていた人も多かったのでは?…と思わせるほど。
役者陣はさすがに見覚えのない人ばかりで、そこがまた、今となっては不思議なリアリティになっているのだが、そんな中でも、何人かは、かろうじて見分ける事ができる。
一番分かりやすいのが、予科練分隊長役の藤田進。
この人は、この頃から隊長役がピタリはまっており、朴訥なセリフには妙な説得力があり、思わずこちらも真面目に聞き入ってしまうほどである。
田舎で待つ青年の姉役には、伝説の女優、原節子。
大河内伝次郎は、顔は良く知らなかったのだが、特徴的な声(昔は、良く物まねされていた)で分かった。
ラストに、唐突に「軍艦マーチ」がかぶさる他は、全体的にプロパガンダ映画っぽいあざとい演出もなく、戦後に作られた数々の戦争映画のような「クサイお涙頂戴もの」でもなく、実に淡々とした記録映画を観るような印象であった。
敵であるアメリカ人の描写や、血なまぐさい殺りくシーンなどが一切描かれていないため、さらっと、最後まで観てしまえるのだが、おそらく、当時の大多数の日本人も、この作品を何の違和感もなく観たものと思われる。(そこが、恐いといえば、恐い所なのだが…)
作られた当時の事情をしっかり理解して観さえすれば、良く出来た青春映画として評価する事が出来るのではないだろうか。


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