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旗本退屈男

1958年、東映、佐々木味津三原作、比佐芳武脚本、松田定次監督作品。

厚化粧で、いつも金ピカ衣装に身をまとった、肥満体のおじさん侍が活躍する、東映時代劇の人気シリーズの一作。
特に本作は、主役を戦前から演じ続けている市川右太衛門映画出演300本記念(!)に製作された1958年度の作品である。
話自体は、どうという事のないもので、伊達藩のお家乗っ取りを計る悪者の陰謀を、退屈男こと、早乙女主水之介が成敗するというだけのもの。
このシリーズの面白さは、そうしたストーリー展開自体にあるのではない。
雄大なロケシーン、バカでかい室内セット、豪華な出演陣の顔ぶれ…など、その「贅沢に作り込まれた舞台芝居」のような雰囲気そのものを楽しむ作品である。
特に本作は、記念作という事もあって、登場するスターたちの顔ぶれが違う。
悪役を演じるのは、お馴染みの、新藤栄太郎、山形勲。
それに対し、陰謀を阻止する善玉陣には、主役、市川右太衛門を筆頭に、女好きのバカ殿をライバル、片岡千恵蔵が演じ、さらに、大川橋蔵、中村(萬屋)錦之介、月形龍之介、東千代之介、大友柳太郎、横山エンタツなど、一人でも十分に主役をはれるだけの、そうそうたる面々が出演しているのが圧巻である。
当時の観客が、自分のお気に入りのスターを応援出来るように、各々の見せ場もきちんと用意されており、今でいう「キャラ萌え」アニメなどと、同じような構造を持った実写作品といえるだろう。
特に、バカ殿を演じている、片岡知恵蔵の型破りな演技が珍しく、また楽しい。
スター不在の現在では、もはや再現不可能な「オールスター総出演、夢の娯楽大作映画」の代表作の1本といえよう。