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極楽島物語

1957年、宝塚映画、菊田一夫原作、長瀬喜伴+新井一脚本、佐伯幸三監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

額縁風の画面の中で踊る、タイ風の踊り子二人。

その後ろの幕が上がる。

海を進む船が三隻。

その中には、南方に向かう日本軍が乗っていた。

船室では、日本で寿司屋をやっていたと云う梶川一等兵(岩井半四郎)が、寿司を握るコツを廻りの兵隊たちに披露していた。

そんな中、やって来た衛生兵の宮坂兵長(佐原健二)は、顔見知りの益木二等兵(益田喜頓)を見つけたので声をかけるが、何かに夢中のような益木二等兵は、なかなか呼びかけに振り向かなかった。

見かねたが兼松伍長(太刀川洋一)が益木に大声をかけ、こいつは今、残飯整理をしている最中ですと教える。

残飯整理とは何かと宮坂兵長が聞くと、船に酔って飯を食えなかったものたちの残し飯を全て、船に強い益木が平らげてくれているのだと云う。

同じ船室内では、日本で刑事をやっていたと云う野長瀬二等兵(三木のり平)が、後一歩で掴まえ損なった犯人たちの写真を廻りの兵隊たちに披露していた。

赤紙が来るのがもう一日遅かったら、こいつら全員掴まえて、末は警視総監にでもなれたはずだと云う、あり得ない自慢話だった。

そんな野長瀬二等兵が広げた写真の中に自分の写真が混じっているのを発見して驚いていたのは、話に夢中だった野長瀬二等兵の背後からこっそり近づき、乾パンの入った袋を盗み取ろうとしていた元スリの柏原一等兵(有島一郎)だった。

雑誌を観ながら、髪をかきあげる奇妙な仕草をしていた原一等兵(谷晃)を見つけた兼松伍長は、何の本を読んでいるのだと取り上げる。

見ると、女の髪型ばかりが載った雑誌だった。

日本では何をやっていたのかと兼松伍長が聞くと、原一等兵は「毛髪縮らし業の先生をやっていた」と云う。

それは何だと再び兼松伍長が聞くと、原一等兵は小さな声で「パーマネント」と答えたので、兼松伍長は怒りの声を上げる。

その頃、盗んだ乾パンを食おうと人気のない所で乾パンを口に運びかけていた柏原一等兵は、すぐ近くで、同じように乾パンを盗み食いしていた兵隊のかじる音に驚き、きょろきょろすると誰もいないので、気のせいかと乾パンをかじり始める。

すると、今度は、その音に側の兵隊が驚く。

そうこうして互いに乾パンを食いあっていた二人だったが、やがて、互いの存在に気づき、ばつが悪そうに敬礼をしあう。

その時、艦内放送で「船倉で娯楽会を開くので、全員集合するように」との声が響く。

娯楽会では、柏原一等兵が前に出て奇術を披露していた。

その柏原一等兵、これから、皆さんの身体に触らず、身につけているものを取り出してみせるので、誰か元気の良い人出て下さいと参加者を募っていたが、あろう事か、元気に手を上げたのは、元刑事の野長瀬二等兵だった。

しかたなく前に来させた柏原一等兵は、鳴りもの係として、ハーモニカを吹く兵隊に演奏を頼むと、やおら野長瀬二等兵のお守りや財布をすってみせる。

そんな中、写真入れを取り出した時、わざと床に落とし、拾うと見せかけて、自分の写真だけこっそり抜き取って返すと、先ほど盗んでいた乾パンの袋も返す。

その後、司会役の吉川上等兵(堺左千夫)の紹介で、輸送指揮官である上杉中佐(河津清三郎)が、この娯楽会が終わったら、御国のために戦うんだと挨拶をする。

次いで、従軍看護婦たちによる国民歌謡の披露になるが、そんな中、柏原一等兵は、先ほど盗んだ自分の指名手配の写真と国残して来た母親の写真を眺め、しんみりしながら、指名手配の写真の方を破り捨てるのだった。

そんな中、絵が得意な宮坂兵長は、従軍看護婦たちの姿をスケッチしていた。

さらに、益木二等兵は、「上海便り」の替え歌に託し、国への手紙をしたためていたが、その歌声に周囲の兵隊たちは苦笑いしていた。

直後「敵襲!」のアナウンス。

船は爆撃を受け、船倉から逃げ出そうとした兵隊たちの上から大量の海水が流入して来る。

野長瀬二等兵は、階段の手すりにしがみつくが、その足には原一等兵がしがみついていたので、重さに耐えきれず、二人とも船倉に溜った大量の海水の中に落ちてしまう。

翌朝、海に浮かぶ筏の上には、上杉中佐、兼松伍長、宮坂兵長、吉川上等兵、柏原一等兵、梶川一等兵、原一等兵、益木二等兵、野長瀬二等兵たち日本兵が乗っていた。

夕べの空襲で沈没した三隻の輸送船から助かった9人の兵隊たちであった。

彼らは間もなく、島影を見つけ、命からがら上陸を果たす。

島をしばらく歩き回った上杉中佐は、無人島らしいと呟くと、全員を前に、皆、本来は別々の隊の所属だが、これ以後は、自分の指揮下に入ると命ずる。

その後、野長瀬二等兵は柏原一等兵につきまとい、お前はスリの柏原だろう、ようやく思い出したとその片手を掴むが、野長瀬二等兵は、ここでは俺の方が位が上だ、俺の言う通り復唱しろと命じ、「自分は柏原一等兵殿が地方でなされた事を一切忘れます!」と野長瀬二等兵に言わせる。

その後二人は、原一等兵や益木二等兵らと共に、当座寝泊まりする小屋作りを命じられるが、数日間飲まず食わずだったので、食料調達に行かされた梶川一等兵と吉川上等兵をうらやんでいた。

草影から、そんな弛んだ兵隊たちの様子を見ていた兼松伍長は、その場の四人に落ちている棒を拾わせると、銃剣の訓練を命ずる。

すでに体力もなく、ヘナヘナの状態で、腰の入っていない銃剣訓練をし始めた四人の姿を、草陰に潜んでいた一匹のゴリラが面白そうに眺めていた。

兼松伍長に代わり、指揮を執る事になった柏原一等兵は、こっそり逃げ出そうと他の三人の方向転換を命ずるが、兼松伍長がすぐに戻って来たので、必死に逃げ出す。

地面にへたり込んだ四人は、「これでも人間かな〜…」と誰言うともなく呟くが、その時、草むらから出て来たゴリラが、野長瀬二等兵の胸を触り始める。

目をつぶっていたので、最初はうるさそうにしていた野長瀬二等兵だったが、その手を握ると妙に毛深いので、目を開けてみてゴリラと知り、仰天する。

隣に倒れ込んでいた柏原一等兵も、ようやくゴリラに気づき、悲鳴を上げてあわてて逃げ出すのだった。

その頃、海岸にいた上杉中佐は、宮坂兵長に、どうも、この島には誰かいるようだと話しかけていた。

兵隊たちは空腹の頂点に達しており、野長瀬二等兵は、寿司を握るまねをしていた梶川一等兵が豚に見えるらしく、追いかけ回してその手にかぶりつこうとする有様。

食料を探し、ジャングルを探索していた宮坂兵長は、きれいな花に囲まれた湖にたどり着くと、その水を飲もうとして、疲労困憊のため、その場に気絶してしまう。

それを見ていた原住民の娘パローマ(草笛光子)は、急いで、持っていた水を宮坂兵長に飲ませ、すぐに姿を消すのだった。

正気を取り戻した宮坂兵長は、その場に置かれた駕篭に、たくさんの果物が入っている事に気づき、それを持って小屋に戻る。

念願の食料にありつき、取りあえず空腹を満たしたその夜、兵隊たちは、少し気分に余裕が出て来たのか、一人一人がめいめいに、懐かしい童謡を歌い始める。

やがて全員が歌に合わせて踊り始めるが、そうした様子を見守っていた上杉中佐は、「みんな、早く寝ろよ」と優しく声をかけてやるのだった。

翌日、宮坂兵長は柏原一等兵を伴い、昨日、原住民の娘と遭遇した湖に戻ってみる。

すると、その途中、原住民らしき一団が、輿のようなものを担いで近づいて来たので、草影から様子をうかがう事にする。

やがて、呪術師らしき長老が、地面に置いた輿に向かい何か言葉を投げかけると、付いて来た女たちが輿に向かって泣き始め、やがて全員が立ち去って行く。

その後、輿に近づき、すだれのような部分を怖々めくって中を覗いてみた宮坂兵長は、一人の娘が苦しそうに座り込んでいるのを発見し、これは病人だと気づく。

その時、先ほど立ち去ったと思っていた女三人が戻ってこちらの様子をうかがっている事に気づいた柏原一等兵は、身振り手振りで、薬を飲ませたいので水はないかと伝えてみる。

すると、驚いた事に、小柄な娘が「ヅーミ、直る?」と片言の日本語で返事をして来たではないか。

宮坂兵長はきっと直りますと太鼓判を押す。

数日後、兵隊たちが暮らす小屋の所にやって来た小柄な娘パウ(宮城まり子)は、ヅーミ、病気直った。お礼に米持って来たと、袋を差し出す。

パウが、自分の村には、あなたたちと同じ国の人が二人来ていると言い出したので、兵隊たちは驚く。

その日本人とは、最高顧問として酋長の相談役になっていた桧山庄助(榎本健一)とその子分、山伏谷三 (トニー谷)だった。

彼ら二人は、ここの原住民たちが洞窟内に隠し持っている財宝を奪おうとやって来た詐欺師たちだったが、ある日、村で酋長マキニ(山田巳之助)と長老(寺島雄作)が話している言葉から、日本兵が上陸した事を知ると、少し慌て始める。

早く、兵隊たちに自分たちの正体がバレる前に、秘宝の箱を開ける鍵を手に入れないといけないと焦っていたのだ。

その頃、益木二等兵と野長瀬二等兵は、見張りの交代を規則通り行っていたが、誰も見ていないので、ばかばかしいから止めようと意見が一致する。

そこへやって来たパウは、二人にその島に生えている桜を見せる。

それを見た益木二等兵が「さくら〜、さくら〜」と調子っぱずれの唄を歌い出すと、「おじさん、節が変だよ」と注意したパウが、片言の日本語ながら、見事な歌声で「桜」の唄を披露し始める。

その後、三人は、柏原一等兵が掘っていた塹壕の場所に来る。

パウは、塹壕が分からないらしく、墓か?と聞く。

兵隊たちが否定し、自分たちは敵と戦争をやっているのだと教えると、パウは戦争とは何か?と問いかける。

喧嘩だと柏原一等兵が分かりやすく説明すると、パウは急に表情を変え、「おじさん、人殺しか?」と怖がったので、兵隊たちは返事に窮してしまう。

気を取り直したパウは、焼き鳥の歌を教えるから一緒に歌おうと誘い、「サテ カンビ ♪」と歌い踊り始める。

その歌に乗り始めた三人の兵たちたちは、踊りながら「ヘボカネヤ♪」と歌い始めるが、その様子を見つけた兼松伍長は「こらっ!歩哨はどうした、馬鹿者!」と叱りつける。

その後、パウは、酋長たち村人を大勢引き連れ、兵隊たちの小屋にやって来ると、ズーミの病気直ったので、お礼に明日、酋長の家で酒飲もうと通訳をする。

上杉中佐は、笑顔で酋長と握手して快諾の意思を伝える。

さらにパウは、村一番の踊りの名人が踊りを披露すると言う。

すると、一人の腰蓑の男ハニー(森繁久彌)が進みでて、野長瀬二等兵に興味ありげに近づくと、胸の星印を触りながら何やら笑顔で話しかける。

パウが通訳すると、私のおばあちゃんに似ていると云うので、隣で聞いていた柏原一等兵が笑うと、あなたはおばあちゃんに似ているとハニーは続ける。

その後、ハニーは、一舞い踊るのだった。

翌日、兵隊たちは村の酋長の家に招かれ、病気が治ったズーミ(雪村いづみ)の歌を聴く。

パローマの華麗な踊りも披露された。

そうした中、桧山と山伏の二人は、洞窟内の巨大石像の目の中から、宝の箱の鍵を盗み出そうとしていたが、いつの間にか、入り口付近に長老が建っており自分たちの行動をじっと睨んでいる事に気づくと、何とかごまかしてその場を立ち去るしかなかった。

後日、湖のほとりで、パーマネント屋の原一等兵から、髪をセットしてもらったパウは、自分は日本人との混血であり、両親は既に亡くなったので、今はひとりぼっち。みんなが日本に帰る時、自分も一緒に日本に連れて行ってくれと頼む。

その頃、初めての食料調達を命じられた柏原一等兵と益木一等兵は、ジャングルの中で道に迷っていた。

その時どこからともなく、ズーミの歌声が聞こえて来たのでその方向へ行ってみると、そこでは湖で行水する村の娘たちの姿があった。

思わず見とれる二人だったが、益木は早く食料を探さないと小屋に戻れなくなると柏原一等兵を促すが、なかなか言う事を聞かない。

そこに突然現れた巫女キーラ(黒木ひかる)は、何やら現地語で二人を責め始め、「タブー、タブー!」と繰り返し、山の方を指差す。

見ると、その斜面には、十字に組まれたいくつかの棒に磷付にされた白骨が数体見えた。

二人は、何か、村の禁忌に触れたと察し、怯えてその場を逃げ出すしかなかった。

パローマは、湖のほとりに咲く赤い花を摘みながら唄を歌っていた。

そこに、宮坂兵長が近づいて来たので、喜んだパローマは兵長に近づき、この花を摘むと会いたい人に会えると言う。

パローマの気持を察した宮坂兵長だったが、パローマは酋長の息子ココ(岩村信雄)と結婚するのではないのかと聞く。

しかし、パローマは、神様が無理にお嫁に行けと云うが、自分はココは嫌いだと云う。

それでも宮坂兵長は、自分は兵隊であり、今後どうなるか分からないと拒もうとするが、パローマの熱い気持はますます燃え盛るばかりで、その勢いのままに、二人は抱き合うのだった。

しかし、その後村に戻ったパローマは、長老から何やら叱られる。

どうやら、村のタブーを犯したので山に行けと云われているようだった。

長老はその後、大きな鍋で何やら怪し気な汁を煮だし、その横では、巫女キーラが「サターン!」と言いながら、不気味な踊りを始める。

湖には雨が降り始めるが、その後も逢瀬を楽しんでいたパローマと宮坂兵長は、草影でキスを交わしていた。

やがて、二人はデュエットを始める。

すると、雨が上がり、虹がかかった。

その頃、海岸で見張りをしていた益木一等兵と柏原一等兵は、船影を発見、大喜びで手を振り出すが、船からボートが降ろされたのに気づいた二人は、すぐに敵かも知れないと警戒する。

一方、村では、酋長が上杉中佐に、最高顧問の桧山と山伏を紹介していた。

上杉は二人の身分を聞こうとするが、二人は地質学の調査に訪れた大学の先生と云う事でごまかす。

しかし、酋長が、二人から受け取ったと云う「日本からの委任状」とやらを取り出してみると、それは全くの偽物だったので、上杉中佐は二人を睨みつける。

その時、「敵襲です!」との伝令が来たので、取りあえず全員宿舎の小屋に帰るよう命ずる。

兵隊たちが全員匍匐して様子をうかがうと、ジャングルの中にやって来たのは、明らかに敵国兵だった。

ところが、その中から進み出た一人の日本兵らしき青年が、日本人はいませんか!とジャングルに声を開け始める。

自分は、元陸軍の川口少尉(宝田明)だと名乗る。

上杉中佐が進み出て事情を聞くと、川口少尉は、我が軍は連合軍に対し、無条件降伏をしましたと言うではないか。

にわかに信じがたい言葉に、上杉中佐は、売国奴め!自分たちをだまして、捕虜にさせる気だな?と川口少尉に詰め寄る。

しかし、自分も信じられなかったが、事実であり、断腸の思いで泣いたであります!と涙ながらに河口少尉が答えるのを見た上杉中佐は、嘘ではない事を悟る。

その背後で聞いていた、他の兵隊たちも同様だった。

すでに、スマトラ、フィリピンの軍隊も全員引き上げは完了しており、あの船は南方引き上げ最終船だと川口少尉は説明する。

兼松伍長は、全員整列させるが、宮坂兵長の姿がない事に気づく。

その頃宮坂は、村でパローマから、日本兵たちが帰るらしいと聞き、驚いて持っていたスケッチ帳をパローマに渡すと、小屋に戻る為村を離れる。

柏原一等兵たちは、いよいよこの島ともお別れか…としんみりしていた。

お前ともな…と云われたパウは泣き出す。

そんな柏原一等兵に、日本に戻ったら、刑事と犯人の事は忘れようと思うと、野長瀬二等兵が語りかける。

しかし、柏原一等兵は、とにかく法は曲げられんと言いながら、胸の二つ星をむしり取って捨てる。

そんな中、パウは寂しそうに「さちら〜、さちら〜」と「桜」の唄を歌い始め、兵隊たちも寂しそうに耳を傾ける。

一人海岸に佇んでいた上杉中佐は、がっくりうなだれていた。

その頃、鍵を手に入れた桧山と山伏は、洞窟の中の扉を開き、巨像の前に置かれていた宝の箱を開けていた。

中には想像通り、ダイヤや宝石類がつまっていたが、その時突然、地震が起き始める。

島の中央にある火山が大爆発を起こしたのだ。

あわてて洞窟から逃げ出した二人は、倒れた巨木に足を挟まれ、動けなくなっている原住民を見つけ、一緒に力を合わせて助けてやる。

助かった現住民は二人に礼を言うが、すぐに逃げ出してしまう。

何だ?今の態度は?と二人が不思議がっていると、二人の背後に迫ったゴリラが二人に抱きついて来る。

山伏はすぐに逃げ出すが、桧山は気絶してしまい、ゴリラに介抱される。

気がついた桧山は、まだもうろうとしながらも、介抱してくれた相手に礼を言うが、それがゴリラだったと知ると、又気絶し直すのだった。

パウは、パローマの家に戻って来て、宮坂は日本に帰ると言っていると伝える。

その時、村の住民たちがパローマの家の周囲を取り囲み、何やら責めるような声を上げ、騒ぎ踊り始める。

どうやら、火山を鎮めるため、タブーを犯したパローマに山に登れと云っているらしかった。

パローマの母親マルル(畷克美)は、宮坂のスケッチ帳を胸に抱き、家を出て行こうとする娘の足にすがりつくが、パローマはそのまま家を後にする。

パウは、宮坂の元に駆けつけると、パローマが火の山に登る。死ぬつもりだと知らせる。

パローマは、長老のお祓いを受けた後、髪に付けていた赤い花を母親に託すと、一人、火山に向かう。

そこに駆けつけて来たのが、パウと宮坂兵長で、溶岩が流れる斜面を登って行くパローマの姿を認めた宮坂はその後を追う。

山の斜面を登っていたパローマは、自分を呼ぶ宮坂の声に気づくと、一瞬迷った末、又来た道を戻り始める。

するとそこで、恋しい宮坂兵長の姿を見つけるが、近づこうとした所に溶岩が流れて来て、二人の間に大きな川の流れを作ってしまう。

その熱気で、パローマは気絶してしまう。

その手から落ちたスケッチ帳の中にあった、パローマの顔を描いた宮坂の絵が燃え上がる。

宮坂も、溶岩の川に行く手を阻まれてはそれ以上山を登る事は出来なかったが、そこにパウと一緒に登って来たマルルが、娘から受け取った赤い花を宮坂に手渡すのだった。

そこに、宮坂を探しに来た日本兵たちの声が近づいて来る。

日本への最終船に乗り込んだ兵隊たちと、桧山、山伏たちは、遠ざかって行く島影に別れを惜しんでいた。

宮坂兵長は、海面に、パローマと赤い花の幻影を見ていた。

益木は、俺はもう一度この島に来るよと言う。

戦争さえなければ、どこだって極楽島なんだと誰かが言ったので、「そうだな…」と柏原は頷くのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

分かりやすくいってしまうと、「モスラが出て来ないインファント島物語」である。

音楽が「モスラ」と同じ小関裕而だし、全編、島民たちの歌と踊りが満載のミュージカルコメディだからである。

しかも、山には火の神が祭ってあり(「猿の惑星」の禁断の地みたい…)、怪し気な巨大魔像に守られた秘宝などの設定もあり、これで怪獣が出て来ないのが不思議なくらいの雰囲気。(等身大の着ぐるみゴリラは出てくるのだが…)

公開されたのは1957年、「ラドン」公開の翌年で、「モスラ」(1961)より4年も前の作品。

原作者は「君の名は」で有名な菊田一夫。

若き岩井半四郎(仁科明子の親父さんで、同時期、東映の「旗本退屈男」シリーズにも出ていた)や、島の秘宝を狙う怪し気な日本人コンビ、エノケンとトニー谷、さらに、特別出演している森繁久彌が、タモリのハナモゲラ語のようなめちゃめちゃな現地語で、「釣りバカ」ハマちゃんの宴会芸みたいに歌い踊りまくるシーンや歌って踊る草笛光子の姿が珍しい。

元々、舞台劇だったらしく、特にアクションが盛り込まれている訳ではないので、今観ると、やや単調な感じもするが、当時の「南方への憧れ」がうかがえて興味深い内容になっている。

劇中、宮城まり子が「焼き鳥の歌」と称して「サテ…」と歌っていたり、スカルノ元大統領のような扮装をしたエノケンの姿から、インドネシア近辺の島であると推測出来る。

ただ、インドネシア近辺の島だとすると、ゴリラが住んでいるのが解せない。

オランウータンならともかく、ゴリラがこんな地域に住んでいるはずがないからだ。

ひょっとしたら、「キング・コング」(1933)のイメージで、勝手に当時の日本人の中に、ゴリラはこの辺にも住んでいると信じ込まれていたのだろうか?

ヒロイン役の黒塗りの草笛光子は、かなり好みが分かれそうな「濃い顔つき」。

特撮も、冒頭の三隻の船団のミニチュアや、最後の火山の爆発と溶岩の流れなどに使われているが、全体的に低予算だったらしく、ちゃちな印象である。

途中の兵隊コントのような部分も、今となっては古めかしく感じられるが、初めて観る人には、懐かしいかも知れない。

今回不思議だったのは、冒頭の部分にタイトルロールがない事。

浮き出し文字風の「極楽島物語」と云うタイトルは出て来るが、その後に続く、スタッフやキャストが一切出て来ないのだ。

どう見ても、タイトル文字に続く二人の踊子が踊っている部分にかぶさっているはずなのに文字が出ない。

エノケンとトニー谷の二人が、宝の箱を開ける鍵を入手する部分も説明がなく、今回観た作品は、かなりカットされている不完全版だったのかも知れない。

とは言え、全体的にカラーは美しく、歌あり踊りあり笑いありで、当時の大衆娯楽の見本のような作りになっている事は確か。