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毒蛇島奇談 女王蜂

1952年大映作品。
田中重雄監督。
中国文化の影響を色濃く残す、南海の島「月琴島」に2人の学生が訪れ、大道寺家に招待される所から事件は始まる。
大道家の美しい娘と恋に落ちた学生の一人、日下部(船越英二)は、密室の中で殺害される。
やがて、20年の歳月が過ぎ去り、日下部の子供は美しい娘へと成長していたのだった。
娘は恋人(菅原健二)と共に、故郷の島へ戻るのだが…。
お馴染み、横溝正史原作「女王蜂」の映画化作品である。
当然、名探偵金田一耕助も登場するのだが、後年一般的になった「おかま帽に着物姿」ではない。
何だか、片岡千恵蔵の「多羅尾伴内」みたいなイメージなのだ。
オールバックの髪型に、でっぷり貫禄のある背広姿。
片岡千恵蔵版の「金田一シリーズ」が東映で作られ始めるのが、1947年からなので、おそらくその影響化に作られたものだろう。
原作自体も傑作とは言い難いのだが、映画の方もテンポも遅く、正直面白いとはいえない。
それでも、島の風俗の描き方や、ラストの謎解きシーンなどには工夫も見られ、それなりに楽しめないでもない。
金田一ファンなら、機会があれば一度は観ておくのも良い珍品。
「八墓村」での「たたりじゃ〜!」ではないが、同じように事件を暗示する不気味な老婆(浦辺粂子)が登場するのが興味深い。