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病院坂の首縊りの家

1979年、東宝、横溝正史原作、日高真也+久里子亭脚本、市川崑監督作品。

横溝正史邸を訪れた金田一耕助は、アメリカに渡ると告げ、パスポート用の写真を撮るために、横溝夫妻(本人)から近くの本条写真館を紹介される。


その本条写真館では、謎の美女からの依頼で、「病院坂の首縊りの家」と近所で恐れられている不気味な空家で、深夜、不思議な婚礼写真を撮影に行かされていた。


偶然、その事を聞かされた耕助は、またしてもかかってきた女からの電話で、写真屋と共に屋敷を訪れると、そこで、風鈴のように吊り下がっている人間の生首を発見する…。


鮮やかな色使いで、秋の京都を描写した前作「女王蜂」から一転し、本作では、冬景色を背景に、渋い色調でまとめあげられている。


注目すべきは、写真屋の助手役で、杢太郎(草刈正雄)というキャラクターが登場している事だ。


彼は、金田一と似たようなユーモラスなキャラクターとして描かれており、物語中盤からは、金田一の助手役として探偵の補佐役を努めている。


しかも最後には、冒頭と同じく、横溝邸で、金田一が座っていたのと同じ場所に座り、「何か仕事ありませんかね〜」とつぶやかせている。


これは、どう観ても、「草刈版金田一」の可能性を暗示する演出だと思われる。


一応、石坂浩二版金田一ものは、本作が最後とされていたが、人気シリーズであっただけに、興行成績次第では、シリーズ続行の余地を残していたとしても不思議ではないだろう。


残念ながら、草刈正雄版金田一は実現しなかったが、他の俳優で、その後も金田一ものが作られた事は承知の通り。
そうした、推測を含みながら、見直してみるのも面白いかも知れない。


桜田淳子の二役が見物。


シリーズ名物、「よし、分かった!」の加藤武は、本作では等々力警部役として、金田一とは初対面という設定で登場しているのも御愛嬌。