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HOUSE ハウス

1976〜7年頃、ルーカスの新作「スター・ウォ−ズ」の名前が、ぼちぼち日本でも囁かれ始めた頃、撮影所が低迷していた日本映画界でも、外部から招いた一人の新人監督の作品に、当時の映画青年たちの期待が集中していた。
全編、特撮だらけのすごい作品らしい…という噂と共に…。
TVCM界の鬼才として一世を風靡していた、大林宣彦監督の登場である。
高校生のオシャレ(池上季実子)は、大好きなパパ(笹沢佐保)に、新しいママ(鰐淵晴子=「ノンちゃん雲に乗る」のノンちゃん)との再婚を、いきなり告白されたのにショックを受け、クラスメイトたちと、おばさま(南田洋子)の住む別荘に、夏休み、遊びに出かける事にする。
ファンタ(大場久美子)、ガリ(松原愛)、クンフ−(神保美喜)、メロディ、スウィート、マックら7人の少女たちは、人里離れたおばさまの別荘で、世にも恐ろしい体験をする事になろうとは、夢にも思わなかったのだが…。
一見、良くある「呪いの館もの」のように思えるが、実は「ポップな化け猫映画」でもある。(大林監督は、昔の化け猫映画ファン)
ほとんど全編、仕掛けが施されていないシーンはないのではないか?…と思える程、合成やカラーフィルター、ソフトフォーカス、アニメ、ワイプ、鏡効果…など、技法のオンパレード。
当時のCMそのもの…といった、ファンタジックな映像が最初から最後まで連続する。
神保美喜は、タンクトップにパンティスタイルのほとんど裸状態でアクションをやっているし、大量の血もでてくる。
さらに、当時少女だった、池上季実子や松原愛のオールヌードまで登場!
めくるめく「映像マジックの万華鏡」みたいな作品なのだが、全く恐くもエロティックでもない。
いうなれば、「鬼才のお遊び感覚」だけ…の実験作品というしかない。
だから、ホラーとして観ると、完全にダメ映画なのだが、実験映像として観ると、今でも十分面白い。
オシャレの家の表札には「木枯」の文字が…(パパが「木枯し紋次郎」の原作者だから)とか、フーテンの寅さんが登場したり(そっくりさんの原一平)とか、ファンタが憧れる学校の東郷先生が尾崎紀世彦だったり、当時、チョコレ−トのCMに百恵ちゃんと共演していた三浦友和や、音楽担当の小林亜星やゴダイゴの面々、石上三登志、はては監督本人自らまで画面に登場…とか、鰐淵晴子の登場シーンは、全て逆光気味の照明に風が吹いていて、あたかも女神のように表現されていたり…とか、捜し出すときりがないほど、遊びに遊んでいる。
叙情派の名人として、大林監督が有名になる直前の貴重な作品といえよう。


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