2002年7月

サクランボの木  7月1日-1  サクランボの魔法

よく通る道なのに気づかなかった
こんなにも見事なサクランボ
いきなり現れて
その見事に連なった小さな赤い珠が
こっちへおいでと誘う
赤と緑のコントラストは、クリスマスと同じ、
なんだかうきうきと楽しさを沸き立たせてくれる、
そんな夢の色 魔法の色
もうひとつのサクランボ 7月1日-2  もうひとつのサクランボ
 
これもまたサクランボ
春にあんなにもあでやかに咲き誇った花の女王・桜
その実はこんなにも小さくて儚い
でも小鳥達には大切なごちそうになるのだろう
そうしてまた、次の世代へと命を繋ぐ
もうひとつの大切なサクランボ
りんごの実がついてきて 7月5日  いつのまにか

このあいだ見たときには 可愛い花が咲いていて
それは つい昨日のようなのに
いつの間に ぽったりと丸い膨らみに代わってしまったのか
まだ小さくて硬そうな それでもちゃんとリンゴの形して
実りの季節を待っている
早足で駆けて来る季節を きちんと見届けながら
一番良いときを待っている
急がずにお待ちなさい でも見逃さないで 見落とさないで
わたしはちゃんとここにいるから
そんな声が聞こえそうなリンゴの森
花菖蒲咲いて 7月8日  四度めの夏

りそうという名の花菖蒲の里から 
ここに越してきて四度めの夏

たった一つだけの花
毎年きちんと咲かせてくれては
 あの長かった春を甦らせる

何事もなかったかのように季節は何度も過ぎるけど
確実に違ってしまっていることを 
この花だけが教えてくれる

そうして この美しい花が長かった春を終わらせて
夏をつれてきてくれたことも 
わたしはいつも思い出すだろう

この夏の初めの季節に
木いちご 7月17日  線香花火

子供のころ 線香花火が好きだった
小さな火花がぱちぱち弾け しだいに丸い小さな珠になる
落とさないように 静かに静かに 息さえ止めて
じっとその珠が大きくなっていくのを見つめた
木いちごのぽってりとした丸みは 
あの無垢な時代を思い起こさせる
落とさないように 大事に そっと しまい込んだ宝物を
いつのまにか忘れてしまった事も
7月31日  誰を待たん―大待宵草

宵になると開く花
月を観たくて月見草
いえいえ待ち人は違います
お月様には悪いけど
月観るふりして、ほんとうは
あの人来るかと、宵に待つ
その立ち姿は迷いなく
月よりはるかに美しい
待つ人のある幸せの花