Aベマの功罪


これは社会的に抹殺れた、高校時代の友人の話である。

Aベマという男はちょっとだけガラが悪かった。

実際はガラが悪いだけで結構話せるのだが、それ故に格好の
おちょくられ役であった。

そんな晴れた放課後、いつもの通りにゲーセンに行くことになった。

私、Aベマ、モナカ、アサヒ、その他数人という大パーティーである。

ソニック某というゲーセンで嬉々として
遊びまくるAベマ。

アサヒ「なあGED、アイツ
おかしくないか?

GED「何が?」

アサヒ「だっていつも金がね〜って言っているのに、
羽振りが良すぎないか?

GED「確かに変だな、まあアイツの事だし
なんかきわどい事でもやったんじゃん?」

アサヒ「そうか?あり得るな」

などと不自然に勘ぐっていたのだ。

その日は無事に解散したのだが、この憶測が継続されようとは思っていなかった。


翌日、教室に入るとアサヒが寄ってきてこう呟くのだ。

アサヒ「アイツはきっと何かをやったに違いない!」と

給料だと思えば良いのだが、本人が「バイトうざい」と
否定しているのも事実。

つまり合法的な金銭では無いのでは無いか?


と、アサヒの
スーパーコンピュータが判断したのだ。

授業中に
マイコン(雑誌)を読んでいる奴の妄想予想だ、この読みは正しいに違いない。

GED「でも、どんなことをやったんだろう?」

アサヒ「手っ取り早く稼ぐなら、当たり屋だろう!」

GED「それはそうかもしれんな」


アサヒ「
だろ、ピッタリだ(笑)

GED「なんて
頑丈なんだ、Aベマは!」

それから日を追うごとに、話は
違う方向に動いていく。

むろんこの過程で噂する人数が増えていく。

Aベマに気づかれるのは時間の問題であった。

そして楽しそうな我々を見たAベマが、ふと近づいてくる。

Aベマ「なに話てんだよ」

アサヒ「いや、わたくしの口からはちょっと!」

Aベマ「な・に・話てんだ〜!」(ガシッ!)


突如、両手でアサヒの
首を絞めるAベマ!

絶体絶命!もがくアサヒ、
「ガッ、ギッ」意味をなさない言語を唱える。

冗談もほどほどにアサヒを解放し、我々に向き直るAベマ。

Aベマ「で、何の話してるんだ?」

クラスメート1「いやー、凄いじゃん!」

クラスメート2「お前にはかなわないよ。」

Aベマ「何がよ?」

クラスメート1「だって取引に成功したんだろ?」

Aベマ「!?????????」


鳩に豆鉄砲を食らったような顔をして驚くAベマ。

クラスメート2「違うの?」

Aベマ「いや、っていうか取引ってなに?」


クラスメート3「隠すなよ、まんまと出し抜いたんだろ!」


Aベマを覗く全員が、にやついている。


GED「(こいつら悪魔だ、いたぶる気だ)」


アサヒ「麻薬の取引をしたんだろ?」


GED「で、小麦粉とすり替えたんだろ?」


クラスメート1「ボロ儲けじゃん、
カックイー(笑)

Aベマ「何だそりゃ!誰がそんなことを?」

アサヒ「コイツだよ!」(私を指さしている)


全員「これ!」(アサヒを指さす)



Aベマ「きさまか〜!」



突然、
ヤクザを出し抜いた時のような漢の目になり、アサヒを睨む。

アサヒ「なに〜、おまえら裏切ったな〜!」

席から立ち上がり、捨て台詞を残し彼方に消えるアサヒ。

GED「あいつら、仲がいいな〜。」

クラスメート1「できてるんだよ。」


GED「仲がいいわけだ。」




走るアサヒ、追いかけるAベマ。



違う目でそれを見る我々。



GED「さて、飯でも食いに行くか」



全員「そうだな、行くか。」




燦々と降り注ぐ太陽、そよぐ風。



飯を思案しながら、食堂へと向かうのだった。







数分後、発見され追いかけられる運命も知らずに。

2001/6/28記録


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