スナイパー


洋館にテロリストが立て籠もっているという情報を得て、出動命令が下った。

我々、
特殊部隊は情報のあった場所に向かうことになった。

そこは森に囲まれた洋館であり、
地形効果が高そうに見えた。

おまけに
森の所々には、塹壕が掘ってあったりする。

隊長が作戦前に注意を促す。

「偵察の通り、ここはなかば要塞化されている、不意打ちには気をつけろ」

作戦が開始された、包囲を徐々に狭めていく。

塹壕にはテロリストの姿はない、籠城戦か?

作戦的には単純で、相手を上回る戦力を投入しての半包囲戦だ。

完璧に包囲すると、
死に物狂いで反撃してくるためにワザと包囲に穴が開いてある。

我々の隊が動き出すと、前の方で
銃撃戦が始まった。

背を低くして、流れ弾を避ける。

こんな所で死んでしまっては、
隊のジョークだ。

どうやらテロリストは、森の中で
ゲリラ戦法を行っているらしい。

森の前に掘ってあった塹壕に、身を滑らして安全を確保する。

テロリストは洋館の方に撤退を開始しているようだ。

息を整え
「1、2、3!」と数え、同時に小銃と顔を出し照準を付けながら敵に備える。


ビシッ!


撃たれた!?、しかも
眉間のド真ん中だ。

視界が歪む、森の緑が見える。


宙を浮いているような感覚、ドサという音、衝撃、意識がとぎれた。



肩を叩かれ、意識が戻る。

洋館の入り口前だ。

両開きの重厚な扉
の左右に、特殊部隊の隊員張り付いている。

その男が
サインをしてきた、「突入しろ」というサインだ。

一番乗りは
危険だが名誉でもある、頷いて気を引き締める。

扉に張り付いていた二人が、破城鎚で扉を破壊する。

同時に飛び込み、前転一回転をして膝立ちで構える。

洋館の中は扉の正面に、二階に上がる階段がある。

その階段に

馬鹿でかい光学スコープの付いたアサルトライフルを構えている奴がいた。

しかも、そいつは


階段に腰を掛けながら
足を開き、光学スコープを覗いていたのだ。


ビシッ!!


銃弾は
それもせず、またもや眉間に吸い込まれた。

そのスナイパーに何となく馬鹿にされた様な気がした

気のせいだろう。

意識がとぎれる。



私の後ろで洋館が
燃えている、強襲は完全に成功し、テロリストは逃走を始めている。

周りでは追撃戦が開始されていた。

テロリストの背中に銃弾列を刻み込んでいく。

そうだ!なにをボーっとしているんだ、戦闘はまだ終わっていない

樹木を盾として利用しながら、テロリストに発砲していく。

ここで逃がす訳にはいかない。

私の前を走っていた隊員が、
もんどり打って倒れる。

テロリストも
必死に反撃してくる。

しかし状況は明らかに我々に有利に進んでいる。

投降するテロリストも
目立ち始めていた。

「油断は禁物だ、まだ銃声が続いている。」
と言い聞かし、慎重に木々を縫っていく。


その時、




ビシッ!!!



四肢から力が抜ける、
敵は何処だ?


それにしても凄い、すべて
眉間とは。

スナイパーとは、かくも恐ろしいものなのか。



一言:どうやら私は、殺されたいらしい

2001/6/06記録


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