90度の旋回

あなたは奇妙な現象が身に降りかかったことはないか?

誰しも一度や二度は経験したことがあるだろう。

しかし、
幾度となくその現象に襲われる者は非常にであると思う。

その尋常ならざる世界から襲撃された、一人の哀れな話である。



その日、O氏は急いでいた。

寝坊して学校に遅れそうになっているのである。

事実、その遅刻は
既成事実に近づいている。

なぜ起きれなかったのか自分でも分からない、
気がつくとこの時間だった。

息が切れる、足が悲鳴を上げる、しかし自転車は走らせねばならない。

T字路に差し掛かった、正面は屈強な壁、電柱の周りにゴミが山と積まれている。

そこから左右へ分かれている道路。

いつもの通りに左へ曲がろうとした、その時。


スカッ!


妙に
ハンドルが軽い、でもチャン曲げたことは確かだ。

だが
スピードの乗った自転車は、切ったハンドルを無視するかのように直進する。

おかしい、と思いふとハンドル視界に入れた。

なんだ?ちゃんと曲がってるぞ、でもおかしいな。


なんでハンドルが直角に曲がっているんだろうか?


ブレーキをかけようにもハンドルの左側が自分に向かっているため、うまく掛けられない。

貧弱な制動力は自転車の運動エネルギーを殺しきれない。


ガシャーン


ものすごい衝撃が襲ってきた。


ドサ


O氏は
ドンキホーテのように電柱に突撃し、ゴミの山に放り出された。

そして、
おもむろに立ち上がるとハンドルを直して再び走り始める。


全神経をハンドルに集中しながら。


そのときのO氏は、笑いながらこう証言した。


O氏
「あの日がゴミ収集日で助かったよ」


さすが屈強たるメガドライバー、言うことが違う(笑)

2001/6/04記録


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