アサヒという男

高校時代の友人の一人にアサヒという男がいた。

今回はその男の幼少時代の
奇行を紹介しよう。

時は寒さが身にしみる正月のことである。

誰もがご存じの通り、正月には
親泣かせイベントがある。

お年玉である。

親は
イヤイヤ正月を迎え、子供は嬉々として待ち望む。

年始め早々、大人にとってはツキのないイベントである。

その日、アサヒは
子供という特権を利用して資金を稼いでいた。

ここまでは普通の子供なのだが、ここからアサヒの
真価が発揮される。

10万もの大金をせしめてホクホクのアサヒ少年。

人間の欲望は際限がない事を身をもって証明してくれる。


繊細で壊れやすい精神、幼稚な理性は歯止めが利かずに
妄想 想像を膨らませる

そして、ある情景が目に浮かんできた。

成金がいい気になって、
「はーはっはっはっはっ、金だ金だ〜」といって札束を巻き上げる。

そんな俗悪なテレビドラマのシーンが頭をよぎった。

それを見たアサヒ少年は、
いつかあんな事が出来るようになりたいと思っていたらしい。

「ここでテレビの真似をしてみたいな」と考えた。

目の前には
10万という大金がある、「やるべきか、やらざるべきか」天秤は揺れる。


「よし、やろう!」


思い立ったが吉日、早速
部屋を掃除し始めた。

数十分後、小綺麗になった部屋を見渡してほくそ笑む。

準備完了、いざまいらん!

腕を勢い良く上げる、手の中の札束が宙に舞い、ヒラヒラと落ちてくる。

気分はもう悪代官、つい笑い声も漏れてくる。


「は〜はっはっはっはっは、金だ〜」


と叫ぶ、
親が居ないのを確認しての犯行だ。

金が舞い落ちると、
すかさず両腕を一杯に広げて散らばったものを掻き集める。

掻き集めながら「この金は、俺の物だ〜」とさえ言い放つ。


ガキ子供
のくせに、なんともあさましい精神の持ち主か。

三つ子の時の教育がなっていないことは確実だ。

この行為を
何回か繰り返し、子供心に満足すると急に不安に駆られた。


「ちゃんと10枚あるだろうか」と不安になる。


そして
「1まーい、2まーい、3まーい」と数え始める。



「8まーい、9まーい、あれ?そんな!」



アサヒは枚数を数え終えて、絶望することとなる。


「い、一枚足りない」


その時の事をアサヒはこう述回する。






アサヒ「あのときは発狂したね」と





結局、諭吉さんは人知れず家出したまま帰ってこなかったという。


一言:バチが当たったに決まってる、ざま〜みろ

2001/5/27記録


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