宇宙
「ここは、何処だ」
目を開けた感覚が残っている、なのに何も見えない。
失明したか?
椅子に固定されている、4点式シートベルトか?
妙に浮遊感がある、おかしいな熱でもあるのか?
何かを叩いている音がする、バチバチと何かが爆ぜる音がする。
何かを通して伝わってきている音だ。
頭にかかっていたモヤが徐々にかき消えていく。
そうだここは戦場、補給を受けるために帰ってきたんだったな。
アルビオンに
体中を倦怠感が覆っている、疲労しているからだ。
眠りたい、だがその時間は無いだろう。
スイッチを入れる、360スクリーンに光が灯る。
右にアルビオン、周りには使い切った外部コンテナが見える、船外作業中の人間も。
新たに振動が伝わってくる、たぶんコンテナを交換中なのだろう。
通信が入る、「補給終了よ、いつでもでられるわ。」
意識が覚醒する、身体が覚醒していくのが神経を伝わってくる、心地よい緊張感だ。
「よし、作業員を待避させてくれ、出る!」
「了解、がんばって。」
機関に火を入れる、アイドル状態確認、システムオールグリーン。
さぁ、因縁に決着をつけねばならない、機関出力を上げていく。
「GP03、出る」
Gに身体が強ばる、その重圧の中で完全に意識を取り戻した。
進路上は戦闘中だ、そして奴もだろう。
レーダーに反応、戦艦だ。
照準付けよし、発射!
光は指向性のもって直進する、そして戦艦を貫く
まばゆいばかりの閃光が視界を焼く、モニターが瞬時に光量を調節する。
その時、音声が入ってきた。
「この〜」
直感的に敵だと判断し回避行動に入る。
現行MSでは出せないような速度が確認できる、赤い機体色も。
疑念が湧く「MA?、いや小さい」
今度は確認できた、赤いMS、間断無い回避機動。
「ガーベラテトラだ、シーマか!」
だが私は知っている、確かあれはビームマシンガンが主兵装だと。
「運が悪かったなシーマよ、そのMSを呪え!」
I・フィールド発生装置ON、これで無敵だ。
シーマがマシンガンを連射してくる、避ける必要すらない。弾幕に突っ込む。
振動が伝わってくる、と同時に警報が鳴った!
「馬鹿な、相手はビームマシンガンだぞ!通るはずがない。」
近距離で狂ったように打ちまくるシーマ、その手に握られているのは
だだのマシンガン
「!?馬鹿な、そんなことが!」
通信機が音声を拾う、間違いなくシーマだ
「墜ちろ、墜ちろってんだよ〜」
「この戦闘下で通信だと!?正気か?」
混乱していた、無意識に手近なスイッチを押す。
ミサイルにワイヤーが付いている、爆導索だ!
着火、爆発がワイヤーを伝ってシーマを囲む
だが、鮮やかな機動ですり抜けるシーマ、続けてビームカノン発射。
これもかわして、なお肉薄してくる。
「うわ〜」
理性が限界を超えた、心が折れたのだ
GP03なら加速で振り切れる「イケル、コレシカナイ」
スロットル全開強大な加速Gが襲いかかる。
「これで大丈夫な筈だ」
だが通信機から聞こえてくる声が希望を粉砕した
「くそ!なんて頑丈なんだい!」
馬鹿な!最大加速だぞ!?
どんなに回避機動をとっても追い付いてくる、「これがエース!?」
エースだろうが何だろうが、ハードウェア性能を越えられるのか?
ガーベラテトラ・フルバーニアンなのか?
蜂の巣にされていく、手に取るように分かる。
装甲が剥がれていく、エネルギーを急速に失っている。
「信じられん、すべての爆導索をよけきるとはな」
「はぁ〜はっはっはっは、墜ちろ、おちろ〜!」
シーマ搭乗のガーベラテトラが、眼前に迫る。
最強のGP03、一撃の下に葬られたリリーマルレーン、蜂の巣にされていくGP03
そして勝ち誇り、引き金を引き続けるシーマ
恐ろしい、あれが一年戦争を生き抜いた
エース・シーマ
なのか!
「さてと、そろそろいくか、会社に。」
恐るべきエース・シーマ、私は二度と忘れることがないだろう。