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背景 |
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劉表に恨みを持つ孫堅は袁術の誘いにのって劉表の本拠地、荊州へ攻め上ってきた。 襄陽城は孫堅の兵によって完全に包囲され劉表の命運も尽きたかに見えたその時、呂公から思いがけない知らせが届いた。 |
強兵と弱兵 |
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孫堅が死んだ。たとえ優柔不断な劉表でさえ、この機を逃す気はなかった。 自ら襄陽上の城壁に立ち、城を囲む無数の江東の兵に向かって叫んだ。 「玉璽を奪いし奸雄、孫堅の首討ち取ったり!」 彼の声に軍勢は俄かに波立った。 「時は満ちた! 今こそ、蛮族を討ち破るのだ!」
劉表の声と同時に城門が開くと、荊州兵は戦意を失った孫堅軍に襲い掛かった。戦さとは恐ろしいものだ。
恐怖に打ち震えていた弱兵は息を吹き返し、獣のような強兵はかかしのように棒立ちになっている。
微笑む劉表の隣に、 「このたびの戦さ、一時はどうなるかと思ったが、どうやら我々の勝利のようだな」 「はい・・・・・・。しかし、呂公、黄祖軍の動きが心配です」
「なぜだ?」 「たとえ大将を討ち取られたとはいえ、気骨の士が多い江東の諸将のことです。あのような戦い方をしていては、虜にされるのが 落ちでございましょう」 俄かに劉表の顔に怒りが込み上げてきた。
「なんと不吉なことを!
「恐れながら我が兄 「それではただの臆病者ではないか!!」
「いえ、違います。大将の首を奪われ、軍勢が総崩れになっているにもかかわらずなお向かってくる兵士は、生き延びることを考え
ておりません。いわば死を覚悟しているのです。ましてもとより蛮族の兵は強者が多く、まともに戦っては多大な犠牲を払うで
しょう。 「・・・・・・うむ」
劉表は返す言葉がなかった。確かに兵法でも、死地にいる兵士と戦ってはいけないと言われている。また敗軍だからといって
むやみやたらに攻め立てれば、追い込まれた彼らから思いもしない反撃を受けることもある。
劉表は 「では、お前はこの戦い、どうなると予測するか」
「呂公は人望高き総大将を討ち取った張本人です。彼を仇と思う将軍は多いはず。むやみに追撃すれば、弔い合戦を望む猛将に
討ち取られてしまうでしょう。
「兄に似て厳しいことを言うな、 劉表は苦笑した。しかし見渡すかぎりの戦勝ムードに包まれて、本心ではまさか彼の言葉が現実のものとなろうとは 夢にも思っていなかった。 |