注意 |
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黄夫人の嫉妬 |
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劉備亡き後、子の劉禅が蜀の国の皇帝となった。 諸葛亮は先帝劉備より預かった漢王朝再興という目的にために日々激務に追われていたが、 皇帝の劉禅は隙あらば無能な宦官をはべらせ、色欲に現を抜かそうとしていた。 諸葛亮は国を乱しかねない宦官を遠ざける一方、劉禅の側室の数を制限したが、代わりに国中の美女を 選りすぐって劉禅の心を満たさせていた。 ある日のこと、激務の合間を縫って諸葛亮は町中を訪れ、劉禅好みの女性を探した。首尾よく これまで連れ帰ったどの美女よりも美しい女性を見つけることができた彼は、早速宮廷に連れて帰り 劉禅に献上した。
劉禅は事のほか喜び、彼女は一夜にして皇帝の寵愛を一心に受けることになった。 日頃、寝る間も惜しんで働いている諸葛亮のことを彼女は十分知ってはいたが、諸葛亮が美女をよく見つけてくると 言われれば、不安な気持ちにならなくもない。まして彼女は自分の容姿に少なからずのコンプレックスを持っているの だから。 ある日、とうとう我慢できなくなった黄夫人は、自宅でひと時の休息を取っている諸葛亮に、涙を流しながらこう尋ねた。 「私などといるより、美女探しをしているほうがさぞ楽しいことでしょう!」 |
諸葛亮の愛 |
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彼は一瞬、目を見開き険しい表情になったが、すぐに穏やかな笑みを浮かべると、夫人にこう尋ねた。 「雲南のさらに遥か南には生きとし生けるものを寄せ付けないほど高い山々が連なっているということをお前は知っているだろうか?」
博学の黄夫人が知らぬはずがない。 諸葛亮は続けた。 「では、天下で比類なきこの山よりもより高い山を作ろうと思ったならば、お前ならどうするか」 「もちろん、天下で二番目に高い山に土を積んで高くします。気が遠くなる作業ですが、いずれ一番高い山を越えましょう」 今回も、黄夫人の答えに諸葛亮は満足しているようだった。 「うむ。ところでお前は、たとえどんなに多くの人民を使い、どんなに長い時間をかけ、どんなに高い山に どんなに土を積んだとしても、決して届かない場所があるということを知っていようか」
「もちろん、それは天でございましょう」
諸葛亮は白い歯を見せて笑った。
黄夫人は下を向いたまま赤面し、自分の心の狭さをただただ恥じた。
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