あれはみゆきさんが「お時間拝借」をやっている頃でした。「パラダイス・カフェ」のレ コーディングのため恒例のロスに飛んでいたみゆきさんがある時、ラジオでこう言ったのである。

「今週はロスからです。　−−−−−　来週は日本に帰ってきています」
耳敏い(みみざとい・日本語？)僕がその言葉を聞き逃すはずがありません。
「……ということは何か、明日から一週間成田空港に通いつめれば、みゆき さんに会えるということか？」

　思いついてから、慎重に何度も自問自答する。
……そういうことだよな ……そうだよな……そうだーーー！！！

　次の行動を皆さんは予想できますよね？
　そう、名づけて成田一週間通い詰め計画(仮称)。

ああ、愛って偉大だわ。どこまでも私を大胆にさせるなどと ほざきながら、大学の研究室に置き手紙を残して忽然と姿を消したのであります。

　しかし思いのほか、大苦戦。理由は2つありました。

　1つは成田空港にはターミナルが2棟あるということ。僕はそれを知らずに初めの数日は片方にしか足を 運んでいませんでした。

　もう一つは、空港はチェックが厳しい。空港に入る時に「見学」か「出迎え」か聞かれますが、流石に 毎日空港を見学に来る人など前代未聞。４日目(だったと思う)で入口で止められて、別室に連れて行かれ、 所持品などをかなり厳密にチェックされる(おー恐……)。
　なんでも向こうの人に目をつけられていたらしく、「テロリストが空港内を調べているのではないか」 と疑われていたらしい……。確かに用もなく、毎日ぷらぷらしてはたまに旅行者の出口の前でスタンバって る男は怪しいかもしれない……。
　手帳は入念に見られた。空港内の地図とか書いていると思ったらしい。
　しかし、中に挟まっていたものは……お守り代わりに持ち歩いていた新聞のみゆきさんの写真の切れ端。

　それにしても……

　まったくこの温和な性格をそのまま絵に描いたような僕を見てテロリストと間違えるとは何事だー！
　そりゃ確かに、「みゆきさんに会える」と確信していた僕は、たまに突然ニヤッとか笑っていたよ！
　みゆきさんに会えた時のことを考えて、話し掛ける言葉をぶつぶつと一人で口ずさんでいたよ！！

　…あ、「それでは疑われてもっともだ」と思われました？　ふーんだ！！

　しかし実に貴重な体験であった。その時は悪いことをしているわけでもないのにかなりビビっていたが、今では 名誉の勲章(日本語？)となって、たまにこうして自慢していたりします。
　そしてこう豪語するのであります。

　僕は世界一の中島みゆきファンかつおっかけなのであーる！！！　と。

【追伸】結局みゆきさんには会えませんでした。でも志茂田か●きさんを発見！　別にサインもらおうとはしなかったけど……。