規制と安全評価

 人工的な要素を食品に取り込むというやり方は、実は決して新しいものではない。ご存知のとおり、 現在の加工食品の殆どには食品添加物が含まれてるのだ。

 この食品添加物に関する規制および安全評価としては、急性毒性、亜急性毒性、発ガン性、催奇形性などを 調べなくてはならないことになっている。
 しかし驚くべきことに、食品の一部にすでに組み込まれた形で出荷される遺伝子組み換え食品については、 開発企業にこれらの試験を一切義務付けていない
 よって開発企業から提出されるのは急性毒性の試験データのみである。

 しかも安全評価のやり方にも疑問が残る。組み換え食品が安全であるかを評価するのは厚生大臣の諮問機関 である食品衛生調査会である。しかし実際に審査を行うのは、その中のバイオテクノロジー特別部会の下に設 置された一分科会に過ぎない。
 ここで安全評価がされる期間は1996年9月の4作物7品目の場合で僅か4ヶ月であり、しかも密室(情報公開され ていない)で決められた。しかもメンバーは10人程度で医師が少数いるほかは全て科学者である。
 遺伝子組み換え食品が科学者の探究心と企業の野心からもたらされたものだとすれば、この構成要員の中身を 見ただけでも、安全評価が適正に行われているか怪しいところだ。

 さらに議論されるデータは全て開発企業から提出されたものであり、行政が独自に実験を行ったり情報収集 をするなどされていない。これでは企業が仮に自分達にとって不利になる情報を隠していたとしても、それを 発見することは出来ないだろう。

 事実上、安全評価は機能していないのだ。
 今後、この分科会の構成メンバーが遺伝子組み換え食品開発企業に天下らないことを、私は悲壮な思いで祈らずに入られない。

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